会えないことと、気が合うこと(テニプリ): 「あーあ、今日も大石はせんせーんトコいくから先に帰っていてくれってさー」 「ん?あぁ、手塚も竜崎先生のところに行くって言っていたから、多分同じ用件なんだろう」 部活が終了し、早めに着替えが終わった二人は外に出るときにそれぞれの相方に声をかけていた。 その反応が一緒だったということらしい。 菊丸の愚痴を聞くと、ここ最近は毎日竜崎先生の所にいっているようだ。 「対抗戦が近いってのもわかるんだけど、あんまりほぉっておかれるのもヤなんだよねー」 「ふふふ。まぁ、僕の方も似たような状況だから、あんまり慰めてはあげられないなぁ」 「いーよいーよ!不二だって、手塚が全然相手にしてくれてないってのわかってるもん。そっちの方が大変ジャン?」 そういって、菊丸は歩き出した。 そろそろ桃城や越前が着替え終わって出てくるころだろう。 そんな時に先輩として思う人の話で盛り上がっているところは見せられない。 「ん?帰るの?」 「うんー。待っていようかとも思ったんだけど、一回やっちゃうと、プレッシャーかけちゃうからねぇー」 そういって、菊丸は苦笑いをした。 「ん、そうだね。僕も今日は帰ろうかな」 不二も菊丸のあとを追うように歩き出す。 「一緒に帰る?」 「そうだね。途中までだけど、一緒に帰ろう」 校門を出たあたりで菊丸の激しい愚痴が始まる。 さっき、不二の気持ちもわかるといっていたのはどこにいってしまったのだろうか。 「・・・んでねー、どうしても都合がつかないっていうから、いつなら都合がつくのか?って聞いたの。そしたら、都合のつくときまで待てっていうんだよー。しんじらんないよねー。いちおー恋人のつもりなのにさー」 はっきりと恋人と宣言できるのが菊丸の強さ。 まぁ、それだけ不二を信用しているということか。 「ん、手塚だってそんな感じだよ。ただでさえ部活の後は部誌もつけないといけないし。先生への報告もあるしね」 不二はちょっと遠い目をする。 「そーだよねー。ついでに生徒会長さんだから、普通の学校内でもなかなか余裕がないだろーし。不二も大変な人を好きになっちゃったねぇ」 アハハと、わらう菊丸はとてもまぶしく見えた。 「まぁ、朴念仁さんだから。手塚は」 「うあ?!ハッキリそういっちゃうかなー。まぁ、部活や仕事に関してはしっかり・・・いや、完璧主義してそうだけど、恋愛とか自分が何かを楽しむことに関しては不器用そうだもんねー」 「フフフ。よく見ているね」 ちょっと不二は不敵な笑いをした。 「んー、だって、大石をみていると、結局いつも近くに手塚がいるジャン?いろいろ見えちゃうんだよねー」 そういって、やっぱりアハハと笑った。 不二の不適な笑みにはたいていの部員は縮み上がるというのに、菊丸だけはまったく意に介さずこうして笑ってくれる。 それだけ自分の力に地震があるという点では、越前と似たようなものか。 「最近デートとかしてる?」 「はぁ?」 突然の質問に不二も間抜けな返答を返す。 「・・・ん、あぁ。最近休みにも会ってないね。とはいっても、休日は部活だからそういう意味では確実に毎日会っているけど」 「いや、もちろんそういう意味じゃなくてさー。二人でってことだよ。まぁ、俺らが休日も含めて毎日顔をあわせているんだから、そんな時間がないことは百も承知なんだけどねー」 ぶうっ!とふくれて菊丸は肩にかけていたかばんを手に持った。 「そうだね。まぁ、毎日会えるだけでも幸せと思わないといけないかな」 「ん?あぁ、そーだね。そもそも会えなければどんな話もできないもんねぇ」 そういって二人の視線が交錯した。 「アハハ」 「ふふふ」 おもわず笑いがこみ上げる。 「しゃーないな。また明日大石にいたずらしてやろっと。恋人を待たせている罰だっ!」 ぐっと握りこぶしを上げる菊丸。 「ふふふ、僕も何かおしおきを考えようかな」 「うひゃあ?!不二のお仕置きってちょっと大変そうだにゃー」 「そうかい?そんなに怖いつもりはないんだけどな。みんなのイメージが先行しているだけじゃない?」 そういってふふっと笑う不二は十分怖いと思う菊丸であった。 「ん、ここでお別れだね。それじゃ、また明日」 「ほーい♪んじゃねん。お互いがんばりましょってことで」 「そうだね。それじゃ」 分かれた二人はそれぞれの道を。 それぞれに思う人を考えながら。 FIN 2003 01/05 written by ZIN 1994-2003 MEGA-Company Co.Ltd ALL Right Reserved