コート:(テニスの王子様:塚x不) 「ふぅ、やっぱり手塚は強いねぇ」 休みの日にもかかわらず、手塚と不二は高架下のテニスコートで練習をしていた。 「・・・越前とのゲーム、どうだったの?」 不二は前々から気になっていたことを聞いてみた。 なんとなく、この雰囲気なら聞けると思ったのだ。 「とりあえずは勝てた・・・というところだな」 その返答に不二はいつも細めている目を見開いた。 「手塚が『とりあえずは』勝てただってぇ?」 その反応に今度は手塚が驚く。 「別に『なんとか勝てた』でもいいぞ」 「そんな感想をいわれるとこっちが困っちゃうよ」 「いや、どうだったのかと聞かれたのだから、正直に答えただけだが?」 自分の反応になぜ驚いたり、困られているのかわからないといいたげに手塚は不思議そうな顔をする。 「そういうところは鈍感なんだよねぇ。手塚はみんなの目標であると同時に僕に勝てる唯一の存在なんだから、そうそう負けてもらっちゃこまるんだけど?」 不二は目を細めてそう言った。 「ふぅ、お前らは似ているな・・・」 「ん?誰と僕がにているっていうんだい?」 「当然、越前だ」 「僕と越前が似ている?そんなはずはないんだけどなぁ」 「どこが似ているといわれても、同じセリフを言うというところが非常に似ていると感じただけだが」 「えーっと、負けちゃ困るってところかな?」 すこし首をかしげながらも、クイズに答えるように楽しそうに不二がその似ている場所を当ててみる。 「あたりだな。もちろん越前は『俺に勝ったんだから、次に対戦するまで絶対に負けるなよ』だったが」 「ふぅん。部長とか先輩とかってのを多少は気にしてほしいところだね」 「ん?不二はそういうところは気にしない性格だと思っていたが?そういうのは基本的に大石の担当だろう」 「僕もいちおう3年の先輩だからね。多少は気にするのさ。しかし、僕と越前が・・・ねぇ」 クスクスクスと不二がラケットを抱えて笑う。 「そんなにおかしいのか?」 「うん、やっぱり負けてられないなぁと思ってね」 「まだ、十分不二のほうが強いぞ」 「いや、そうでなくて・・・イヤ、なんでもない。負けないように気をつけなくっちゃ」 「お前がそんなに越前を意識していたとはな。次のランキング戦は激戦になるな」 「ふふふ、ま、そんなところだね」 「なんか、含みのある言い方だな」 「あ、最近ちょっとは勘がよくなったんだ」 そういって、また不二はクスクスクスと笑った。 「気持ちの悪いやつだな」 「ま、そういう時もあるってことだね。さて、そろそろ練習を再開しようか。今日は裕太が帰ってくるから早めに帰らないといけないんだ」 「そうなのか、残念だな。もう少し長くできると思っていたのだが」 「ま、その分集中してやろう」 「そうだな。じゃあ始めるか」 そうしてまたコートにラケットで打つ音と、ボールがコートに弾む音が聞こえ始める。 それは不二にとって心地よい瞬間であり、心地よい音楽であった。 「ふふふ。僕と越前が似ている・・・ねぇ」 そこには、いつもどおりにこにことラケットを扱う不二がいた。 「負けないよ、越前」 FIN 2003 04/08 written by ZIN 1994-2003 MEGA-Company Co.Ltd ALL Right Reserved