フェイク:(テニスの王子様:海x朋) 「リョーマ様ー!がんばってー!」 ぶんぶんと手を振ってリョーマ様を応援する私はうそつきだ・・・。 最近そんなことを考える。 桜乃はうすうす気が付いているみたいだけど、私だって自分の気持ちが本当はどうなのかわからないんだ。 最初は目が合うだけだった。 それも、ことさらリョーマ様の応援を強くしたときにたまたま「うるせぇ」といわんばかりのどちらかというと非難するような視線。 「なによー。先輩だからってそんなににらまなくってもいいじゃない!」 単にそう思っていた。 それだけの存在。 そう、それだけの・・・。 数週間がたって、やっぱり目が合うことが多いことに気が付いた。 それだけでは何がどうというわけではないはずだった。 でも・・・。 気が付くとあいつの顔を思い浮かべる自分がいる。 いつも不機嫌そうな表情。 3年の乾先輩と結構いっしょにいることが多い。 桜乃の話では、プライベートでもいっしょにいることが多いらしい。 トレーニングメニューを作ってもらうついでにコーチしてもらっているという話だけど、そんなにテニスって大変な部活なのだろうか。 授業中にふとグラウンドを見ると、あいつが体育の授業中だった。 やはり頭にバンダナを巻いている。 よく目立つなぁと思っていたら、いきなり振り向かれて目が合ってしまった。 いや、この距離なら目が合ったとしても気が付かないだろう。 多分気のせい・・・。 そう思うことにした。 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、すぐにあいつはクラスの人たちとの授業に戻ってしまった。 あまり仲良くという雰囲気じゃないな。 と、思わず苦笑する。 部活の中での態度とクラスの中での態度はそんなに違わないようだ。 ・・・・・?。 あれ? 私、そんなにあいつのこと部活でよく見ていたんだっけ?。 そんなことを考えてしまい、ちょっと顔が熱くなってしまった。 誰にも気が付かれていないよね? あいつを見ていて顔を赤くしたなんて知られたら、桜乃にからかわれちゃう。 私がいつも桜乃をリョーマ様のことでツッコミを入れているのに、今度は私があいつのことで桜乃に・・・。 なんか、へんな気分。 でも、嫌な気分じゃない。 あいつのことを考えると、体の芯が熱くなる感じ。 グッと締め付けられるような・・・。 そんな感じ。 考え事をしていたら、授業は終わってしまった。 なんか部活でもないのにあいつを見られたと思うと、ちょっとだけ得した気分。 窓際の席がこんなによかったと思ったことはなかった。 なんとなくぼぉっとしてしまう。 授業がおわり、誰もいなくなったグラウンドをぼんやりと見つめ、あいつがいた場所やあいつの姿をもう一度頭の中で追ってみる。 そうやって一日が終わることが多くなってきた。 今日は放課後、桜乃は女子テニス部に行くらしい。 少しでもリョーマ様に近づくために自分でもテニスを始めたようだ。 私はというと、いつもどおりにリョーマ様の応援に行く。 今日からランキング戦。 月刊プロテニスの人もすでに来ているようだ。 軽く挨拶をして、テニスコートでリョーマ様を探す。 その視線の先には・・・。 自然にあいつがいた。 そして目が合う。 ちょっとだけ、胸が強く締め付けられる気がしたが、「リョーマ君、今日は気合が入ってるねー」という芝さんの言葉にすぐに視線をリョーマ様に移し、早速今日の第一声を張り上げる。 「リョーマ様ー!ランキング戦、がんばってくださいねー!!」 そういう私は、ニセモノ。 造った視線と、造った笑顔。 視線はあいつを自然に追っている。 そして、その私の視線をあいつも意識している。 今はそれでいい気がする。 きっとチャンスは訪れる。 まだ・・・。多分まだだから・・・・・。 それまでの、精一杯の・・・フェイク。 FIN 2003 04/04 written by ZIN 1994-2003 MEGA-Company Co.Ltd ALL Right Reserved