バレンタインの先へ歩き出そう:(テニスの王子様:海x朋)

待ち合わせ
「ふぅ・・・。早く来すぎちゃったかな。あいつ、結構時間に正確だけど、さすがに30分も前には来てないか・・・」
朋香は待ち合わせの駅の前の噴水に腰掛け、海堂がくるのをまった。
付き合い始めて2週間。
基本的に平日の帰りがたまに一緒になるぐらい。
学校では学年が違うこともあって、なかなか会う機会がない。
それでも、自分達は結構きちんとお付き合いできていると思う。
「ま、部活がものすごく忙しいから、休みなんてなかなかないのはわかってたんだけどね〜」
独り言をついついつぶやいてしまう。
「せっかくの日曜日だって、私が誘わなければずっと練習してるんだろうし・・・。ってゆーか、せっかく女の子がデートに誘ったのに、練習とどっちをとるか本気で悩むのはどうよ?!」
思わず自分の独り言に握りこぶしをつくってしまう。
「あーあ、私もあれだけ打ち込めるものがあればなー」
両手を握ってくるっと裏返すと、前に突き出してみた。
足も伸ばしてみる。
結構寒いけど、今日は厚手のストッキングだから、大丈夫。
こうやってじっと待つのも楽しい時間。
そんなことを考えながら、もってきた包みを手の中で転がしてみる。
手作りだから、さかさまにしたらぐちゃぐちゃになっちゃうから、そんなに乱暴にはできないけど。
「2月になったら結構あったかくなると思ったのに、まだまだ寒いなぁ」
つい、手に『はぁー!』っと息をかけてしまう。
年末年始に比べればもうずいぶん暖かいはずなのにね。
そういえば、初詣も大変だったなぁ。
くすくすと、笑みが漏れてしまう。
「何一人で笑ってるんだ?」
「うひゃあ?!」
突然声をかけられてものすごくびっくりしちゃった。
「なによー!女の子の行動を黙ってみているなんて、趣味がわるいわねー?!」
ぜんぜん海堂先輩輪悪くないのに、ついつい悪態をついてしまう。
「ん・・・、そうか?10分も前なのにすでにお前がいて、なんか真剣に考えているようだったから、何か声をかけずらくて・・・すまない」
海堂先輩はほんとうにすまなそう。
こんなの女の子の単なる気まぐれでつい言っちゃう言葉なのにね。
全部本気にしてしまう。
女の子に免疫ないんだなーなんて、思ってしまう。
「冗談よ!じょ・う・だ・ん!あんまり早くついてしまったんで、ちょっと考え事をしていただけですよーだ」
「・・・そうなのか?。それで、いったい何を考えていたんだ?」
待ち合わせのベンチの隣に座りながら、海堂先輩は聞いてくる。
そんなのは決まっているのにねー。
デートの前に、女の子が相手の男性のこと以外考えるわけないじゃない。
そんなこともデータには載ってないのかしら。
乾先輩にそういうことは教えてもらってないのかな?
「秘密です」
「なんだそりゃ」
「乙女の秘密を詮索するのはやぼってもんよ。それよりはい!これ!」
「ん・・・?」
これ以上の会話は無意味に長くなりそうなので、私はさっさと持ってきたものを渡してしまう。
「なんだ?コレ?」
受け取ったいいものの、海堂先輩はきょとんとしている。
今日が何日かわかってないで、今日のデートを受けたのかしら。
朴念仁もここまでくるとたいしたものねー。
「なに言ってるのよ!今日はバレンタインデーよっ!?そのために手作りのチョコレートを弟達がうるさいなか、がんばって作ったんだから、ありがたく思ってよねっ!」
「ん・・・あぁ、そうか!?」
はっとした顔で、すぐそのあとに納得したような表情をする。
そして、自分の手の上にあるものを見て、ものすごく照れる。
普段表情がないのに、こういう時ってものすごくたくさんの表情が見えて楽しいなぁとか、思ってしまう。
この人と付き合っていると、新しい発見だらけで楽しい。
「あ・・・ありがとう」
ようやく搾り出した言葉のようだったので、とりあえず許してあげよう。
「ま、いいや。結構ありがとうそうなので、許してあげるわ」
「はぁ?なんだそりゃ?!」
「いいの。さ、行きましょ。今日は一日ちゃんと空けてくれているんでしょ?」
「あ・・あぁ」
私はベンチから立って手を差し出した。
その手をすこしだけ戸惑ってから海堂先輩の手が握ってくれる。
そして、その手はぐっと引いて先に歩き出した。
「駅前のフォトンだったよな。今日の最初は」
「うん!」
私達は歩き出した。
久しぶりのデートに。

FIN

2003 06/08 written by ZIN
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