最遊記 対伝シリーズ
闇の光

第一章 起 天から舞い降りた闇 『サンプル版』

「ん?」
「どうしました?悟空?」
いつもは「はらへった」か、悟浄との喧嘩しかしない悟空が突然不思議そうに空を見上げたのが気になり、八戒は悟空に声をかけた。
「うんにゃ、何か変な感じがしただけ」
問われた悟空自身も、自分で何に気がついたのかわからないのだろう。
しきりに空を見上げつつ首を傾げている。
「大方、雲でも見上げて饅頭と見間違えたんじゃないのか?『うまそうだなーって』」
悟浄がいつも通りに冷やかすが、今日の悟空は少し様子が違うようだ。
「そんなんじゃねーよっ!何ていうかさ、すっげえ淋しい視線を感じたんだ。誰かが自分を見つけてほしいような・・・」

「はぁ?!なんだそりゃ?!そんなんじゃわっかんねーだろうがっ!人間語しゃべれっ!この馬鹿猿めっ!」
ぐにーんと悟空の頬を引っ張る悟浄。
「おれにはっへ、はんはははからなひっへいっへるはろーっ!」
じたばたとするが、今日はそんなに強くは暴れないようだ。
「ジープが嫌がるから、そんなに暴れないでくださいね〜」
前から視線を外さずに八戒が嗜める。
そしてそのまま相変わらず無口な三蔵へと話しかける。
「どう思います?三蔵?」
『くだらねぇ』とか、『ふん』としか言わないいつもの三蔵であるが、珍しく反応が返ってきた。
「・・・多少の違和感は感じていた。いつもの馬鹿猿の戯言という訳ではなさそうだ」
「やはり・・・。街は近いですが、避けましょうか?」
八戒も何かを感じているようだ。
「いや、そのまま街に宿を取る。ちと思うところが或るのでな」
「わかりました。そうしましょう」
「んー?なんだよ、俺たちに何の相談も無しで決定かぁ?」
悟浄が後ろから絡んでくるが、三蔵も八戒も特には気にしない。
「ちぇーっ!今日は馬鹿猿もちょーし狂うし、何か嫌な日だなぁ。着いたら起こしてくれやっ」
そういうと悟浄はごろんと背をジープの横板に預けた。
早速寝息を立て始める。
たとえ自分がよくわからないことであっても、信頼している相手にはむやみな詮索をしない。
こういう時には非常に助かる存在である。

何しろ違和感を最初に感じた悟空自身でさえも何がそうなのかよくわかっていないのだ。
「こんな揺れる車上でよく眠れるものですねぇ。少しは見習いたいものです」
あははーと、相変わらずの柔らかな笑いを振りまく八戒。
「鈍感なだけだろう。放っておけ」
無表情を決め込み、前を向いたままの三蔵。

「ん、そろそろ街かな?今日は宿に泊まるんだろ?飯、うまいといいなーっ!」
さっきまでの真剣な表情はどこへやら、早速目の前のご馳走に想いを馳せる悟空。
ある意味いつもの光景ではあるが、どこか違和感があった。
そう、いつもどおりではなかったのだ・・・。
闇はすでに舞い降りていたのである。

ToBe...

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2004 03/15 written by ZIN
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