最遊記 対伝シリーズ
闇の光

第二章 承 未来の或る過去の理 『サンプル版』


霧の多い朝であった。
白々と明けてゆく空。
あと少しすれば霧も晴れ、今日もよい天気となるであろう。
ガンガンガンッ!!
激しい音を立てて、八戒と悟浄の部屋の扉が叩かれた。
「んだよ、うるせーなっ!」
悟浄が枕を扉に向けて投げつける。
「おいっ!起きてるな?!起きているなら、さっさとここを開けろっ!」
「んったく、どーしたってんだよ、朝っぱらから興奮するなんて珍しいじゃねーか」
めんどくさそうにしながらも、悟浄は部屋の鍵を開けた。
瞬間、勢いよくドアが開かれる。
「だから、そんなに慌ててどーしたんだって・・・」
そこまで言いかけた悟浄は三蔵の真っ青な顔をみて絶句した。
「悟空が消えた」
「・・・はぁ?!」


とんでもなく間抜けな反応ではあるが、寝起きである。
大目に見よう。
「何言ってんだ、どーせ朝っぱらから腹でも減って、どっかに出かけてるんじゃねーのか?部屋抜け出してるだけだろ?」
「ベッドがまったく荒れていない。部屋には鍵が中からかかっている。窓は開いていない。そして何より・・・」
「なんだよ」
「ここにひとつしかない鍵がある」
三蔵は部屋ごとに一つしか渡されていない、鍵を目の前に見せた。
「なっ?!」
さすがの悟浄もこれには驚いた。
密室から悟空は連れ去られたことになる。
それもベッドが荒れていないということは、抵抗をしていないか抵抗できないほどのやりかたということである。
「おはようございます。三蔵」
「あぁ、八戒、起きたのか。これはどういうことだと思う?」
さすがの三蔵も自分の仮説に自信が持てず、八戒と悟浄に確認しに来たというところか。
「話だけではなんともいえませんが、聞く限りでは誘拐・・・でしょうね。理由はわかりませんけど」
「悟空が誘拐・・・か。ありえん話だ」
「ありえなくても起こってしまった事実は認めなくてはいけません。とりあえずは部屋を見に行きましょうか」
八戒はベッドから起きると手早く着替えを始めた。
三蔵もとりあえず袈裟を引っ掛けて来たという慌てようだ。
悟浄はほとんど普段着のまま寝ていたので着替える必要はない。
煙草を咥えつつ八戒の着替えを待った。
「お待たせしました。行きましょう」
「おう」
「あぁ・・・」
八戒、悟浄、三蔵の順に部屋をでる。
こういうときに冷静に判断できる八戒がいて助かったと三蔵は正直思っていた。
「で、三蔵、夜中にそういう気配とかはなかったのですか?」
廊下を歩きながら八戒が質問をする。
「昨日お前達が出て行ってからほとんど間をおかずにぐっすりだ。ふと目が覚めたらすでにいなくなっていた」
「悟空は寝るときも静かだったのですか?」
「あぁ、珍しく静かだったな。ショックから立ち直ってないのか、腹いっぱいで眠くなっているのかと思って特にかまうことはしなかったんだが・・・」
「さて、何か残っているでしょうかね」
話しているうちに部屋の前に到着したようだ。
おもむろに八戒は三蔵と悟空がいた部屋のドアを開ける。

ToBe...

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2004 03/15 written by ZIN
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