浴場の欲情(最遊記外伝): ガラガラ。 共同浴場の引き戸が開く。 深夜2時。 天界のほぼすべての業務が終了し、浴場はがらんとしていた。 人との交流を極度に嫌う金禅は皆が完全に引き上げてから浴場に入ることにしていた。 「ふぅ」 そんなに仕事があるわけではないが、一日中自席で仕事をこなすと疲れるものである。 深夜も2時を過ぎると浴場を利用するものもいないが、有事の時のため、浴場は24時間いつでも使用できるようになっている。 また、早朝に使用する者もいるようである。 一通り体を流し、湯船につかるとつい声が出てしまう。 天界人が年を感じることは少ないが、自分が年をとったのかと思ってしまう瞬間であった。 「金禅殿が湯船に入るのに、そんな声を出すと、イメージが崩れちゃいますよ?」 誰も入っていないはずの浴場に静かな声が響いた。 「なっ?!天蓬元帥?!」 「えぇ。まだ除名されていなければ、そんな名前の元帥さんですよ」 ザバッと立ち上がり、金禅は即刻出ようとした。 浴場で二人きりという状況なんて、襲ってくれと言っているようなものだ。 「ナニを期待してるんですか?そんなに緊張して」 特に動揺した様子もなく淡々としたよく通る声が浴場に響く。 少し低めのトーンが心地よい。 いや、そんなことを思っていてはいけないのだ。 思ってはいけないと感じながらも少しだけ動きが止まった。 しかし、体を洗い終わっている以上特に長居することもない。 ゆっくりと一人の時間を堪能できなかったのは残念であるが、ここに長い時間いることのリスクに比べればそんなことはたいした問題ではなくなっていた。 「あがる」 それだけ言うと、金禅はさっさと湯船から足を踏み出した。 「まぁまぁ、ゆっくり浸かっていきましょうよ?」 いつの間にか真後ろに立っていた天蓬は金禅を後ろから軽く抱きしめ、湯船へと引き戻した。 サバッ!という水音とともに後ろから天蓬に抱きかかえられる状態で湯船に倒れこむ。 「ちょっ?!ちょっと待てっ!!どこを触っているっ?!」 「そんな、二人きりで誰もいない湯船の中、することは決まっているじゃないですか」 当然といわんばかりに天蓬は後ろから金禅の敏感なところをまさぐる。 勝手知ったるなんとやらと言うべきなのか、巧みな指使いとポイントの攻めにあっという間に金禅の力が体から抜ける。 単純に湯あたりになったわけではない。 そんなにたいした時間浸かっていたわけではないのだから。 「あ・・・ふあっ!?」 ちゃぷちゃぷと静かな水音と、金禅の上ずった声が浴場に響く。 「かわいいですよ、金禅。そう、壊したくなるぐらいに・・・」 数瞬後、浴場にいっそう高い金禅の声が響いた。 FIN 2003 01/12 written by ZIN 1994-2003 MEGA-Company Co.Ltd ALL Right Reserved