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Wake up to kiss me(八戒&悟浄)

朝。
時計を見て、悟浄は思わず呆然とした。
そう、今はまさに朝である。
既に太陽がさんさんと輝いているところからして、早朝というには少しばかり遅いが、それで
も元来夜型の生活をしている悟浄にとっては、充分驚異的な時間だ。徹夜で飲み明かした時以
外、こんな時間に起きていることは本当にまれで、自宅でこんな時間に目が覚めるのは初めて
ではないだろうかというくらい、普段は眠っているはずの時間。
最近、自分でも自覚できるくらい遊びすぎていたせいもあって、昨日は早々に床に着いた。ど
うやらそれがいけなかったらしい。いっそもう一度寝てやろうかとも思ったが、妙にすっきり
と頭が冴えてしまって、変に寝るのも躊躇われるような時間に、思わずベッドの中でごろごろ
と転がってしまう。
「う〜・・・・」
起き上がるのも寝てしまう事もできずに、寝転がったままうめく悟浄の腹がぐう・・・と鳴っ
た。
「あ。」
そういえば、昨夜は早くに帰ってきて、晩酌したまま寝てしまったので、昨日は夕方家を出る
前にちょっと台所のものをつまんだくらいで、それ以外は何も食べていない。
「腹へったぁ・・・」
自覚してしまうと、更に空腹感が強くなってきて、悟浄はもぞ・・・と布団の中から起きだし
た。


 ゆすゆす。
ゆすゆすゆす。
「・・・ん・・・・?」
余震のような微かな揺れ。
肩に感じる他人の掌の感触に重い瞼を開ければ、視界一杯に印象的な赤い彩が広がった。
「悟浄・・・・?」
「八戒〜、起きろよー」
「ん・・・どうしたんですか・・・・?」
 普段、頼られるのは好きなくせに頼るのは苦手な同居人が、いつになく困ったような顔をし
ている様をぼんやりと見上げて、何事かと起き上がろうとした矢先に降って来た言葉。
「飯。」
「・・・は?」
「だから、飯。ご飯、作って?」
「・・・・・・・・・・・・おやすみなさい・・・」
ころんと布団に丸まって、背を向けられて。
ひらひらと振られる掌と一緒に消えていく語尾に、悟浄は慌てて八戒の体に飛びつくと、思い
っきりその体を揺さぶった。
「はっかぃぃぃぃ、腹へったぁ〜!起きろよー、もう朝だぜ?」
「・・・・・・悟浄。」
「ん?」
こいこいと指先で手招かれて、顔を近づけると、間近でにっこりと微笑まれる。
「悟浄がおはようのちゅーしてくれたら、起きてあげます♪」
「なっ・・・!てめ、甘えんじゃねーぞっ!」
「・・・・・・・・それじゃパンが戸棚に入ってますから、適当に食べてください。」
僕は寝ます、といわんばかりに布団の中に潜ってしまった八戒に、悟浄は思わず恨めしげな視
線を向けたが、この一見穏やかそうに見える男は意外に頑固で、一度言い出したら絶対に聞か
ない。
長くない付き合いの中でも充分に理解できたその性格を思い返すにつけ、徐々に諦めにも似た
ようなものが込み上げる。
「・・八戒。」
呼びかけられて顔を上げると、横になったままの体に覆い被さるようにして、ベッドに腰を降
ろした悟浄の髪が頬に触れてきた。
「ん、・・・・」
 ちゅ、と音が立ちそうなほど軽く口付けられて、可愛らしいその仕草に思わず悪戯心が込み
上げる。
「悟浄・・・・」
「・・八戒?・・・んっ!」
 ぐい、と頭を引き寄せて、深い口付けを仕掛けてみる。
「はっか・・・ん、む・・・はふ・・っ」
 抗議の声を上げようとした唇を塞いで、口内を滑り込ませた舌でじっくりと探索してから離
してやると、悟浄の喉から深い吐息が零れた。
「てめぇ・・・」
「ご馳走様でした♪・・・さて、と。」
 力の抜けた悟浄の体を腕の中に抱き込むと、そのまま布団の中へ連れ込んでしまう。
「うわっ・・・!と・・・、八戒?」
 ぽすん、と倒れこんだ体を胸の上へ抱き込むように受け止められて、赤い瞳が何事かと伺う
ように上目遣いに見上げてくる。
その様ににっこりと微笑み返して、胸の上に乗せた頭を髪を梳くようにそっと撫でてやると、
少しだけ照れたような口調で低い声が飛んできた。
「・・・飯は?」
「あとで作ってあげますよ。だから、もうちょっと寝かしてください。」
「このまま?・・・・いいけど・・・なんか俺、ガキみてぇっつか・・・重くねぇ?」
「いいえ。それに、僕、聞き分けのない子供を寝かしつけるの得意ですから。」
「・・・・・・・!!!!!」
 あまりの言い草に、何か一言言ってやろうと顔を上げたが、よしよしと宥めるように撫でら
れて、思わず毒気を抜かれてしまう。
(・・・ったく、こいつだきゃ・・・)
 なんとなく見上げた先には、一糸乱れぬ綺麗な寝顔があって。
耳元で響く規則正しい寝息が妙に眠気を誘って、悟浄は八戒の胸に抱き込まれた体制のまま、
あふ・・・と大きな欠伸をした。
 女の柔らかい胸ではなく野郎の固い胸で眠るなんて、経験豊富な悟浄にとっても初めての体
験だが、それでも。
(ま、いっか、たまにゃこんなのも・・・。)
 幼い頃の記憶には、こうして寝かしつけられた覚えなど一度もないが、たまには、こんなの
も悪くない。
 守るようなその腕は、くすぐったくはあるがどこか心地良くて。
側で感じる寝息を近い場所で感じながら、悟浄はそっと目を閉じた。
END

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うちの「眠り姫〜」と起こす立場が反対の場合はどうなるかというお話です。
いや〜、二人のらぶらぶさが伝わってくるようですね。
さすがはよくやさん、私のへっぽこなのと違ってこんなすばらしい作品なさるとは(^^;;
同じネタでも、こんなに違うモノですね。精進、精進<無理かも(笑)

2000 03/26 written by よくや
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