break in(悟浄)





ふぅ・・・
どいつもこいつも熱いねぇ・・
世の中そんなに熱くなってどうしようってんだか。

熱くなんてなれねぇ。
そう思い始めたのはいつの頃だろう・・・
自分なんて、いつも一人。
そう思い始めたのはいつの頃からだろう・・・
どんなにがんばったところで、たかがしれてる。
どんなに叫んだって一人の力はしれてる。
そう思って、適当に生きることを決めたのはいつのことだったろう・・・

生きることなんて簡単。
適当にギャンブルをこなせばその日の飯は食えた。
適当に優しい言葉をかければ夜のぬくもりは確保できた。
何人の相手をやりこめ、
何人のオンナが俺の上を通り過ぎていったのだろう。

自分の父親が妖怪であることを知り
自分が半端物であることを知り
自分のために兄が母を殺し
兄は家をでていき
俺は家をでた。

適当に食べて
適当に遊んで
適当なところで寝た。

そんな生活がアタリマエだと思っていたのに・・
あいつらが変えてしまった。

ほら、こうして町の片隅で煙草をくゆらせているだけで、
オンナは俺の方を遠巻きに見つめ、
オトコはいぶかしげな視線を俺に向ける
かといって誰も話しかけるわけでもねぇ。
結局はそういうことだ。

「なぁにシケたつらしてんだ?そろそろ出発だ」
この坊主は人が感慨に浸っているってのに、鼻先にもかけねぇ。
「なぁなぁ、ちゃんと飯つんだ?あ、オマエ、今度は俺の分勝手に食うなよ?」
この猿は飯のことしか考えちゃいねぇ。
「さぁ、いきましょう、悟浄。次の町へ」
さしのべるその手を軽くつかみ、しゃがんでいた姿勢から、一気に立ち上がる。
優しい微笑みは数々の苦難の末に培われたものかもしれない。
「あぁ」
こいつらは俺を同等に扱う。
人間でも、妖怪でもない。一人の個人として。
一人では届かなかった声も、こいつらとともにあれば、届く。
信じる?
そんなものじゃねぇ。
存在そのものが違うんだよ。
「さぁて、いくとするか」
旅立ちがまた始まる。
俺は選んだ。
そして進む。
この命つきるまで。
そういう俺はもう、十分熱いのかもしれねぇな。

FIN






1999 11/16 wrihted by ZIN
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