出会ったときの言葉(天蓬&捲簾)





「捲簾っ!」
天蓬元帥はそのとき、初めて自分の上司である捲簾大将が敵に敗北するところを目撃した。
大将を失った二人の軍はその後総崩れを起こし、さすがの天蓬元帥も、撤退をまとめるだけで
、精一杯であった。
天界の武将として無敵の代名詞であった天蓬元帥と捲簾大将のコンビが敗北したとの報は天界
の上層部にもすぐに連絡が届き、当然のごとく、当人たちは呼び出されることとなった。
「わりぃな・・・どうやら、俺のせいで呼び出しをくらっちまったな・・」
いつもは適当な軽口が多い捲廉であるが、戦闘直後で、しかも初めての敗北と言うこともあり
、だいぶ気落ちしているようであった。
「別に気にすることはありませんよ。誰にでも、負けるときはやってくるものです。それが今
回はたまたまやってきたというだけのことです」
ベッドで療養している捲廉は、未だに戦闘の傷が癒えない状態が続いていた。
「しかし、とうとう負けちまったな・・・俺とおまえで組んでいれば、どんな敵にも無敵だと
思っていたのに・・・」
ベッドの横に簡単ないすを置き、捲廉の看病をしていた天蓬は、大きなため息をついた。
「ふぅ・・・」
「そんなに大きなため息をつくなよ。一番まいっているのは、俺なんだから・・」
その台詞を聞いて、天蓬は、ますます顔をしかめた。
「そうじゃないんです。私がため息をついたのは、貴方が負けたことに対して悔やんでいるこ
とです」
「ん?どういうことよ?」
「簡単なことです。いくら悔やんだところで、負けた戦はもう一度やり直すことはできないん
です。そんなことを考えるぐらいなら、自分がどうして負けたのか、自分がどうしたら勝てる
ようになるのかを考えればいいじゃないですか・・・それが貴方の言う、永遠に負けることは
ないという事じゃないですか?」
「あれ?おれ、そんなこと言ったっけ?」
「まったく・・・貴方という人は・・・私と軍を作ることになったとき、貴方は私に言ったじ
ゃないですか?絶対に負けない軍を作るぞって」
天蓬から視線をはずし、天井をしばし見ていた捲廉は昔の記憶を探っていた。
「そんなことも言ったっけな・・」
「言ったんです!」
天蓬は捲廉の顔を両手で挟み、自分の方を強制的に向かせた。
「私を巻き込んだからには、責任をとってもらいますからね」
「責任?」
「そうです。天界一の軍将ナタクにも負けない無敵の軍を作ると言った貴方の言葉に私はかけ
たんですから、そうなってもらわないと困ります!」
それでも、一瞬だけ、捲廉は視線をはずす。
「まったく・・」
天蓬は、もう一度捲廉の顔を挟んでいる手に力を込め、自分の方に引き寄せると、唇を重ねた。
「?!?!」
捲廉は目をぱちくりさせて声にならない声を上げた。
「自分を思っている人を悲しませないでくださいね。少なくとも、貴方には、私を幸せにする
義務があるんですから」
「・・そうか・・そうだな・・・ま、負けたことはしゃあねぇな。つぎで何とかしてみるわ。
とりあえず、けがを治すのに、今は寝ておくとしよう。わりぃけど、報告のほう、うまくやっ
といてくれねぇ?」
その言葉を聞いた天蓬はにっこりとほほえみ、うれしそうにうなずいた。
「任せておいてください」

「それで、どうなのだ?奴の状態は?初めての負け戦で、戦闘に使えなくなったのではないか?」
無敵を誇る天蓬と捲廉のコンビが負けた事に嫌みを込めて上層部は天蓬の報告に質問を投げた。
「いえ、我が大将、捲廉は意気込み落ちることなく、次の戦闘を今かと待ち望んでおります。
そのためにもしばらくは体の療養を優先するため、私が報告にあがった次第であります。神々
の方々がご心配なさることは何一つございません。次の出陣の命令をいつでも拝命いたします
故、なんなりとご指名ください。」
そういって、天蓬元帥は深々と頭を下げると、軍、総司令部を後にした。
「くく、私が負けるものか・・・けっしてな・・・」
建物を出るときに、一瞬だけ、天蓬の唇がゆがんだ笑みを浮かべたことを知るものはいない・・・

FIN







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