「さーて、いっちょ、行きますか?!」 「そうですね、ぱっぱっと片づけちゃいましょうか」 そういいつつも、二人の背中には冷や汗が流れていた。 4人ならともかく、いや、4人でもこの人数は異常であった。 「悟空と三蔵は?」 「ん?ああ、あの馬鹿猿なら、さっき三蔵をかばったまんま、崖から真っ逆さま」 「それはたいへんですねぇ。あはは」 「おまえ、ちょっと壊れてネェ?」 「さすがに今は人の心配できませんから・・・」 「そりゃそうだわ」 苦笑しながらも、じりじりと二人は後ろに下がるしかない。 「質より量とはよく言ったもんだ」 「人海戦術も、一人に対して千人以上は確かに効果がありますねぇ」 「買いかぶられたモンだ」 「どうします?」 「基本的に逃げる方向で」 「いいですね。私も賛成です」 そういって、二人が頷きあったところで、敵側の大将が号令をかける。 「かかれ!!!!」 「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」 ものすごい数の兵隊が一気に二人に襲いかかる。 「んじゃ、あの辺からとっぱするよん」 「了解です」 二人の目が真剣なものになる。 悟浄が示したのはほんの少しだけ統率のとれていない部分であった。 大きな部隊であればあるほどその統率力は必要になる。 そして、もろい部分もできやすくなるのだ。 それでも、この人数は逆にその欠点さえも大したものではなかったが。 ひたすらに相手を倒す、倒す、たおす・・・ ・・・・・ その作業をつづけ、どうにか人気のないところに身を隠すことができたのは、戦闘が始まって から半日以上たってからのことであった。 「はぁはぁ・・・大丈夫ですか?」 「ぜぇぜぇ、ま、一応な・・・大丈夫というか、途中からはさすがにどういう逃げ方するかっ てとこしか考えてなかったわ」 「いやぁ、奇遇ですネェ。僕もなんです」 「くくく・・・」 「あはは・・・」 二人は静かに笑った。 「わりぃ・・・ちょっと休ませてくれ」 「ええ、僕も少し休もうと思っていたところです」 そう言うと、ごろんとねっころがり、八戒の膝の上に頭を載せた。 「ふぅ・・・」 悟浄はあっという間に意識を失った。 彼の頬を軽くさわり、その寝顔を見つめる。 「かばってくれて、ありがとう・・・少しの間だけ、お休みなさい・・・」 大きな木により掛かりながら、八戒も眠りについた。 ほんの少しだけ、懐かしい気がしたのは八戒だけだったのだろうか・・・ いや、悟浄も感じているはず、遙か遠い昔に大きな桜の木の下で同じ時を過ごした二人のことを。 FIN |