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本当の姿、仮の姿(八戒&悟浄)


ずるっ。ぺたん。
スリッパを引きずるような足音をさせて、めんどくさそうな足音が聞こえる。
特徴のある歩き方は二人で暮らしていたときと全然変わらない。
本人を特定できる歩き方だな。と、八戒はいつもの事ながら、思った。
日曜日の午後、三蔵はたまたま泊まった宿・・・正確にはペンションみたい
なモノで、生活様式は自由にできる反面、すべて自分でまかなうという、本
当に宿だけであるが、その宿の主に頼まれ、町内会の講堂で説法をしに言っ
た。
悟空は当初、特に予定はなかったが、三蔵がたまたま出かけるところを見つ
け、ついていった。
いつもなら、意地でも置いて行くところを、特に文句も言わなかったところ
を見ると、ひょっとすると一波乱有るのかもしれない。三蔵はそう言う雰囲
気に特に敏感だからだ。
自分と悟浄も先手を打って置いた方がいいかもしれないな。とも考えた。
「いよぉ」
ドアを開ける音もけだるさげに、入ってきた声はやはり悟浄であった。
前述の二人が外に出ている以上、他には後一人しかいないのであるから、間
違えようがないのであるが、八戒は何人宿屋に泊まっていたとしても、悟浄
の足音を聞き分ける自信はあった。
「おはようございます。いや、おそようございますと言うべきでしょうか?」
にっこりと笑って少しだけ意地悪な表現をしてみたが、相変わらず悟浄はそ
んなちょっかいには気にもとめないようだ。
悟空とのやりとりにはいつもくだらないことにまで反応するくせにと思いな
がらも、それこそいつも通りの反応なので、特につっかかるようなこともし
ない。
「あいつらはぁ?」
八戒と向かい合うように席に着くと、悟浄は他の二人の行方を八戒に尋ねた。
「三蔵は、オーナーの依頼で説法に行きました。悟空はその後を一緒に着い
ていきましたよ」
「ふぅん・・・ってことは戦闘の準備が必要って事か?」
”ふああぁ”と大きなあくびをしながら、さらりと言ってのける。
基本的に無意識に頭の回る人間なのだ。
「ええ、いちお、用意をして置いた方がいいかもしれませんね」
席を立ち、やかんのお湯に火を付けながら、八戒はその意見に賛同した。
「そう言うことには感のいい人ですから」
お湯が沸き始めるまでのしばしの間席に戻り、茶菓子の入った盆を勧める。
「さんきゅ。それにしても、いい天気だなぁ。こんななか、ボーズは暑苦し
い町内会のおっさんどもを相手に説教か・・・俺だったら、死んでもヤダね」
あっはっは。と、手でぱたぱたと仰ぎながら、テキトウに茶菓子をつまむ。
やかんがけたたましい音と供に湯が沸いたことを知らせ、八戒は再び席を立
つ。
「コーヒーにしますか?」
「ん〜・・・インスタント?」
「ええ、あいにくあなたの好きな『粗挽きネルドリップ』は置いてないよう
ですよ」
苦笑しながらそう告げると本気で悔しそうだ。
「じゃあ、しゃあねぇな。インスタントでイイよ。茶って気分でもネェしな」
「わかりました。ちょっとまってて下さいね」
八戒は戸棚を探し始める。
「腹減ったなぁ。飯はある?」
思い出したように悟浄はコーヒーを入れる八戒に本来起きてきた理由を述べ
た。
「朝の残りで良ければ有りますよ。私は食べる気がなかったので・・・」
「たまにはどっかのばか猿みたいにめいっぱい食うのもいいぞ」
「どうもそう言うキャラになりきれないんですよねぇ・・・」
思わず力無く笑ってしまう。
「キャラの問題じゃネェだろ・・・相変わらず細い体だし・・・」
そう言って、悟浄は席を立ち、コーヒーを入れている八戒を後ろから抱きす
くめる。
「ちょっと・・・危ないですよ」
「ん〜、俺も結構細身だけど、オマエのこの腹の細さは犯罪だろぉ」
八戒の腹を撫でながら、悟浄は自分の腹をめくってみせる。
「だから、やめて下さいってば。コーヒーがこぼれますよ」
「ちぇっ・・ま、いいや。でも、マジな話、気孔を使うなら、体力付けない
としんどいだろ?」
席に戻りながら、悟浄は八戒の心配をする。
「まぁ・・そうなんですけどね。でも、マッチョな私はいやでしょう?」
「う〜む・・・それはちょっとカンベンだなぁ」
「ってことは今のままでいいんですよ、きっと」
「そういうもんかねぇ」
「そういうもんですよ。はい、ホント、あり合わせですけど」
「おう、さんきゅ。あり合わせと言いつつ、さすがだねぇ。ま、今日はゆっ
くりしようや。後で急がしくなるかもしんねぇけどさ」
「日曜日ぐらいは敵さんもお休みすればいいのに。休日出勤手当、ちゃんと
ついているのでしょうか?」
「そりゃ無理だろ?」
「やっぱりそうですよね〜」
あはは・・・と、乾いた笑いをしながら八戒は自分の湯飲みを手に取る。
「ま、少しでもゆっくりとした時間を大切にしていきたいですね。僕らには
時間が悠久に有るといっても、結局限りある事には変わりないのですから」
「・・・そうだな」
そして二人は窓の外の空を見つめた。
戦闘に明け暮れる日々。
話をする時間。
どちらが本当の世界の姿なのだろう。
どちらも本当の姿で、どちらも仮の姿なのだろう。
きっと・・・

FIN

2000 07/31 written by ZIN
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