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いない朝=前編(八戒&悟浄)


「悟浄〜。ご飯できましたよ〜」
八戒はいつものように朝起きて、朝ご飯の支度を済ませると、悟浄を起こしに行った。
生活の慣れとは恐ろしいモノで、いつの間にか、ご飯を作ったり、悟浄の生活の面倒見
るのは八戒の役目となっていた。
「・・・悟浄?」
いつもなら何かしらの反応を示す悟浄の部屋の静けさに、八戒は不安になり、悟浄の部
屋へと顔を覗かせる。
いきなり部屋を覗かれることを嫌う悟浄であるが、朝起こすのと、夜の時間は特にいや
がられることはなかった。
かちゃり。
いつも掃除をして、メンテナンスしてある扉は軽く開く。
「悟浄〜。ご飯ですよ・・?」
その部屋にはいつもぐずぐずと起きるのをいやがる悟浄の姿はなかった。
「?」
一瞬だけあわてるが、はっと思い出し、台所の予定表を見る。
「・・・あ!」
そこには滅多に予定を書き込まない悟浄の汚い字で、『麻雀仲間、新年会!』と記して
あった。
「そうでしたね、悟浄は昨日の深夜から、丸一日半、出かけているんでした・・・この
ご飯・・・どうしましょう」
そこにはいつも通り、悟浄が食べる分のご飯とおかずが用意されてしまっていた。
「ふぅ、まぁ、お昼ご飯として暖めてもイイですし、何とかするとしますか」
独り言を言っても、寂しさが募るばかりだ。
「悟浄がいないと、こんなにも静かなんですねぇ・・・」
正確にはいると思っているときにいない時である。
八戒はもともと一人で過ごすことが多かったため、それほど一人の時間が寂しいという
わけではない。
むしろ、読書したり、音楽を聴いたりと、体を動かさず、ゆっくりと知識を貯めるのが
趣味であるぐらいだ。
しかしながら、悟浄と住むようになり、自然と自分のやるべき仕事が増えてくると、そ
の状況に体の方が慣れてしまってきているのであった。
「さて、いざ突然一人になると、困っちゃうものですねぇ。昼間は基本的に悟浄がいる
モノとして考えていましたから」
一人のご飯を食べ、洗い物を済ませてしまうと、もうやることが無くなってしまった。
普段一緒にいる人間が突然いないと、非常に空間に隙間ができたような気がしてくる。
それも、いなくなったのではなく、たまたまいないだけだと言うところがよけいに空間
を演出する。
片づけや洗濯をしたところで、時間の消費はしれている。
所詮は2人分しかないのだから。
そんなとき、自分がいないときの悟浄を考えてみる。
彼は一人を好まない人間であった。
しかし、深いぬくもりを求めていたわけではない。
『深い関係は、別れが悲しいから・・・』
そんなことをあるときつぶやいていた気がする。
『一瞬の暖かさはその日暮らしの自分にはいくらでも手に入る』
『その日を暮らす金と、暖かいベッド、隣に寝る美人の女がいれば人生なんて十分さ』
出会った頃はよく言っていた言葉だ。
「たった一日なのに、いつもいる人がいないと、寂しいものですねぇ・・・」
テーブルに一人座り、遠くを見ながら温かいお茶をすすっていると、自分がどれだけ悟
浄に依存していたかを感じてしまう。
たった一日。
それがとても遠い。
カップから通じるぬくもりと、悟浄の存在自体のぬくもり。
暖かさは違えど、自分を中から暖めてくれる存在には違いない。
精神的な部分で暖めてくれる存在がないのは非常につらい。
それは自分が花喃を失ったときに一番感じたことだ。
なくすぐらいなら・・・失うことが解っているぐらいなら、大切な存在など作らない方
がいい。
そう言う考えで自分たちは出会った。
自分と悟浄は・・・

つづく


2001 01/07 written by ZIN
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