Oh My JEEP2(悟浄)




「あー、もうやってらんねー、オマエなんか、しるか!!ジープ、行くぞ!!」
悟浄は八戒とさんざんやり合った後に、完全に頭に血が上り、ジープをつれて家
を飛び出した。
「きゅーん?」
八戒の方を気にしながらもジープは悟浄に着いていく。
八戒は窓の外を向いたままだ。
ジープは悟浄を追いかけて外に出ると、車に変身し、悟浄を乗せた。
ガオオオォォン!!
乱暴な運転で、悟浄はジープを発進させる。
「まったく・・・」
八戒は飛び散らかった灰皿や、割れたお皿を片づけ始めた。
「仕方のない人ですねぇ」
その惨状にあきれ果てながら、自分も大人げなかったと少しだけ反省する。
こんなに大きな声を出して怒ったのは久しぶりだ。
悟浄と暮らしはじめてから、こんなことはほとんどなかったし、また、起こり
えなかった。
「今回は少し長そうですね」
いつもは語りかけると心配そうに反応を返してくれるジープすらいない。
完全に一人になった家の中で、八戒は黙々と部屋の片づけを始めた。

・・・

「じゃあ、次の曲は・・・・」
ラジオの声がいやに耳につく。
むかむかした気分は収まらないが、かといって何も音がないままでは気が滅入
ってしまう。
無理矢理にでも耳から音楽を聴くことで気を紛らわせる。
だんだんと町並みが薄れ、人の気配が無くなっていく。
すんでいるところがもともと人の多いところではなかったが、それでもこんな
気分の時は人の気配がない方がいい。
真っ暗な状態から、朝日が昇り始める。
「そういや、結局朝方までやり合っていたのか・・・」
飛び出した時なんて時間を見てから出てきたわけじゃないから、明るくなり始
めた地平線を見てようやくそのことに気づく。
長い髪の毛をなでる風が気持ちいい。
もうすでに暴走させるのではなく、広い道路を流して走る悟浄の気持ちは落ち
着き始めていた。
海の見えるちょっとした広場にジープを止める。
自販機でホットコーヒーを買い、一口飲んでからたばこに火を付ける。
「ふぅ・・・」
大きく煙を吸い込み、そして自分を落ち着かせるようにゆっくりと吐き出す。
少し気分は落ち着いたな。
そう思った悟浄の顔はすでに八戒と喧嘩したときの喧噪の雰囲気は消えていた。
ジープに乗り、ハンドルにもたれかかりながら、フロントガラス越しにぼんや
りと昇ってくる朝日を眺めていると、さっきまであんなにも熱くなっていた自
分に対して笑いがこみ上げてきた。
「ま、俺も悪いわけだしな・・」
一本吸い終わった煙草を消し、次の煙草に火を付ける。
そしてまた大きく煙を吐き出す。
殻になったコーヒーの空き缶をゴミ箱に放り投げ、乾いた音とともに吸い込ま
れたのを確認すると、悟浄は再びジープのエンジンをかけた。
「わるかったな、こんなところまでつきあわせちまって。俺たちの居場所へ帰
るとするか」
再び4輪駆動独特の爆音を響かせ、悟浄は元来た道を戻る。
「とりあえず謝るか・・・話はそれからだな」
八戒が自宅で待っている。
そう思うだけで自分は自分の家に帰ることができる。
それ以上でもなく、それ以下でもないことに気がついた悟浄は、素直に八戒に
謝ることができる。
そう確信していた。

FIN









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