買い物?(八戒&悟浄)




「今日はちょっと市にいって、買い物をしてきますね」
たまたま泊まる宿が無くて、観光地の隅にあったロッジを借りたために、自炊しなくてはならなくなった三蔵一行であったが、八戒がいたために事なきを得たのだ。
「ああ・・・」
相変わらず三蔵は気のない返事を返す。
この男は食べられれば、特に問題はないようだ。
「ねぇねぇ、今日は何作ってくれるの?昨日は、大雨な上に、何にも無かったから、おなかぺこぺこだよぉ」
悟空は昨晩の旅行用の食事では物足りなかったようだ。
「アレではやっぱりだめですか?」
「だめ」
腕組みをして、ふんぞり返るふりをして、思いっきり自分の腹ぺこさをアピールする悟空であった。
とりあえずは簡単に作れるモノで、お昼は何とかして、夕飯は悟空がおなかいっぱいになるモノを考えないといけませんねぇ」
「わーい」
悟空は純粋にたくさん食べられることに喜んでいる。
「お猿さんは単純でいいねぇ」
「悟浄は何か食べたいモノがありますか?」
「ん?オ・ン・ナ」
・・・・・
一瞬あまりにもくだらなすぎる返答に全員がジト目で悟浄をみる。
「八戒、このバカ連れてって、働かせてやれ。すこし運動させて、やった方がいいだろう」
「あぁ?そんな言い方はねぇだろ?そりゃ確かに寒いギャグだったかもしんねぇけど・・・」
しばらく黙っていた八戒が額をひくつかせて悟浄ににこやかに言う。
「行きますよ」
感情を押し殺した八戒の言い方に敏感な悟空はすぐにこそこそと自分の部屋に戻っていく。
三蔵もそれ以上は悟浄の相手をしませんと言わんばかりに自分のさっきまで目を通していた新聞に視線を戻す。
「あ、きったねぇ・・・そりゃ、つまんな・・・」
途中までいいわけを始めた悟浄であったが、八戒の冷たい視線に気がつき、言葉を言い終わらないうちに飲み込んでしまった。
「い・き・ま・す・よ!」
それだけ言うと、八戒はくるっと後ろを振り向き、さっさとリビングを出てゆく。
「さんぞぉ・・」
助けを求めるように三蔵に声をかけるが、帰ってきたのは冷たい返事だけであった。
「オマエが悪い」
「そーだそーだ、ご飯食べられなかったら、悟浄のせいだからな」
扉の隙間から覗いていたのか、悟空が、八戒がいなくなったのを見計らって、悟浄せめる。
「あ、オマエきったねーぞ。さっさと逃げやがって」
「だって、怒った八戒怖いんだもん」
「けっ、臆病者が・・」
「悟浄!!!!!」
「ハイ!」
また悟空とのじゃれあいを始めようとした悟浄であったが、八戒の玄関からの激しい呼び声に思わずびくんと返事をしてしまう。
「早く行かないとどんな目に遭わされるかしらんぞ」
三蔵は抑揚のない声であっさりと悟浄を追いつめる。
「八戒に怒られちゃえ」
悟空もはやし立てる。
「オマエらおぼえてろよ」
捨て台詞をはきながら、ゆっくりとドアの方に行こうとした悟浄であったが、八戒の再度の呼びかけに結局走って、玄関まで行くことになった。
「完全に尻に敷かれているな」
「情けないねぇ」
取り残された二人はしみじみと出ていった二人のことを案じ、大きなため息をついた。


FIN





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