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神の示す先(悟浄&八戒)


「んあ?」
ふと自分を呼ぶ声に上を見上げたが、そんな声は何も聞こえる事は無く、悟浄は自分
の聞いた声がそら耳だった最初はと理解しようとした。
「西へ向かうのだ・・・早く」
もう一度聞こえた言葉にやはり自分の聞こえた声がそら耳で無かったことを気付かさ
れる。
「あぁ?そんな事は今更言わなくてもわかっているんだよ。いちいち直接頭の中に語
りかけてくんな!」
思わず声に出して言ってみるが、それは所詮自分の頭の中に直接語りかけてくる内容
なので、周りに人がいないことを確認して思わずホッとした。
つい確認してしまう自分が少しだけ悲しい。
「自分で何もしないくせに、人に命令ばっかしてんじゃねぇよ。役にも立たないくせ
に、偉そうに人に命令しやがって、そんなんだから、ナタクのときも・・」
自分でその話をしながら悟浄は自分ではっと気が付いた。
「ナタク?それはだれだ?」
自分の言っている言葉が非常に自然に出て来たので、言った瞬間は何も疑問を感じな
かったが、冷静に考えてみると、自分はその出てきた名前の相手を知らないはずであ
った。
少なくとも自分はその『ナタク』と言う言葉を聞いた事が無い筈だ。
「まぁ、いいか・・・結局お前等は何も出来ないくせに適当なことばっかし言ってい
るから腹が立つんだよ。三蔵にしたって、行けといわれたからには西を目指すのだろ
うが、少なくとも俺は全面的に納得しているわけではないんだからな」
「それでもお前立ちは西へ向かうしかないのだ」
聞いているのかいないのか、神は抑揚の無い声で言いたい事のみを悟浄に語りかける。
「だから、んなことはわかってんだよ。わかっていることをお前等に言われるから腹
が立つって言ってるんだよ」
今度は声に出して言わずに頭の中で直接考えるように言い放つ。
「それでも構わん。目的さえ達成されればわれわれは特にやり方や人選にはこだわら
ん。観世音菩薩がどう考え様とな」
「?何を言っている?」
その言葉に悟浄は顔をしかめた。
「お前は知らなくていい事だ。構わずに西へ迎え。いいな」
悟浄の訝しげな問いには取り合わず、言葉を続ける。
勝手に頭の中に直接語りかけて来たくせにまたもや悟浄の都合も聞かずに神は言いた
い事を言って去って行った。
「結局神々ってヤツは信用ならないな」
煙草に火をつけ、一度深く吸いこむと吐き出す溜息と友に悟浄は呟いた。
ひとりごちた瞬間にドアを開ける八戒と目が合ってしまった。
少しだけ悟浄に照れが入る。
「ぼくもそう思いますよ」
「聞いていたのか?」
「いえ、どんな経緯でその言葉が出て来たのかは残念ながら、判りかねますが、最後
の言葉はよくわかりますよと言うよりも、同調させて頂きたいところですね」
「そんなもんかねぇ」
「そんなもんですよ」
八戒が来るまでは険しい顔をしていたのに、来た瞬間にほころんだ事からもその内容
が自分たちに宜しくない内容であることを八戒は感じ取った。
「あんまり役に立たないやつは例え神であっても殺してしまえと思うんだが?」
「それは結構物騒な話ですね。でも、相手が相手ですからねぇ。殺すのは難しいと思
いますよ」
「殺す事にはさほど疑問を持たないわけね」
くすくすと失笑を誘いながら、悟浄は八戒の言葉のあげあしを取る。
「そりゃそうでしょ?そうすれば少なくとも僕達は余計な事に巻き込まれずに幸せに
暮らせていたのですから」
「まぁ、それは否定しないけどな。でも、逆にいえば、三蔵達にも会う事は無かった
んだぜ」
「特に僕は困る事はありませんでしたが?」
さらっと言ってのける八戒に相変わらずの強さを感じる。
「ん〜〜、ま、今となっては4人いるのが自然だからな。そう思わん?」
少しだけ思案げに視線を泳がせたが、八戒ははっきりと言ってのけた。
「僕にとってはアナタがいれば他は対した存在ではないのでやっぱり特に問題は無い
ですね」
「イイ根性してるわ」
「誉め言葉ですよね」
「もちろん」
ニカッと笑った悟浄の顔を見て八戒も微笑み返す。
「んじゃ、この旅が終わったら、ゆっくりしましょう。例え誰経由での依頼でも、神
なんて気にしないで」
「そりゃあ俺もさんせーい。もうこんなたびはゴメンだからな。もし旅をするなら、
今度は自分の意思で行いたい物だな」
「そうですね。二人でこの世界を見て周るのもイイかもしれませんね。今回はどうも
急いで通りすぎてしまったところが多いですから」
「いいねぇ。しかし、それもこれも楽しい時間を過ごす為にはこの旅を終わらせない
と行けないんだよな」
「そのためにはしばらく付き合わないといけませんね」
「しゃあねぇな、一度引き受けたからには最後まで付き合いますか」
「ええ」
そう言って二人は笑った。
その空間は二人だけの物だった。

FIN


2000 05/04 written by ZIN
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