片づけの真相(天蓬&捲簾)





「あの・・天蓬さん?この部屋はいったいなんなんでしょう?」
天蓬に「ちょっと手伝っていただきたいことがあるんです」の一言で呼び出された捲簾は、天
蓬の部屋に入った瞬間、言葉を失った。
散らかっているというレベルではない。
文献がそれこそあふれかえっていた。
ふつうは通路ぐらいはあるモノだが、それすらもなく、書物の上を痛まないように注意して歩
かなければ、進入すら危うい部屋であった。
その中で、天蓬に声をかけようとした捲簾であったが、反応がないので、もう一度声をかけた。
「天蓬元帥さん?」
「あ・・ハイ?」
しばらくして、ようやく帰ってきた返事は、入ってすぐの右の本の山の奥から聞こえてきた。
いぶかしげに思いつつも、本を書き分けると、多少低くなった場所に天蓬が座り込み、次の文
献に手をかけているところであった。
「人を呼びだしておいて、ナニやってるんだ?」
顔を引きつらせながらも、一応訪ねてみる。
「ああ、スミマセン、部屋の片づけを手伝っていただこうと思いまして、声をかけたのですが
、先に片づけを始めようとして、手に取った文献が今研究中のモノだったので、そのまま読み
始めてしまったのです」
「読み始めてしまったのです。じゃあ、ねぇだろ?もともとそんなことで呼び出されるのもな
んか、納得いかねぇが、しゃあねぇ、つきあってやるよ。はやく、片づけようぜ」
「ええ、じゃあ、とりあえず、本棚の中を・・おっと・・・」
立ち上がろうとした天蓬は足下の巻物に足を取られ、よろけた。
それを受け止めようとした捲簾を巻き添えにして結局本の海に倒れ込んでしまった。
「?!」
倒れたひょうしに、捲簾の上に天蓬がのしかかる形になり、唇が軽く触れた。
捲簾は目をぱちくりさせたが、天蓬はあまり気にとめなかったようだ。
「スミマセン、思わずよろけてしまって。やっぱり来てもらってよかったです。一人ではどう
しようもないモノですから。あれ?どうしたんですか?顔が真っ赤ですよ」
思わず視線を背けてしまう。
「なんでもねぇよ。さっさと片づけようぜ」
不思議そうな顔をしながらも、「そうですね」と、天蓬に促され、二人は片づけを始めた。
(まさか、意識しているとは言えねぇしな・・・)
こころでそう思いながら、捲連は黙々と作業を続けた。
「ふふ・・・」
天蓬は自分でも片づけをしながら、笑みを隠せないでいた。
どんな形にせよ、自分のお気に入りを自分の部屋に連れ込めたのだ。
先ほどの感触で捲簾が自分のことをまんざらでもないと思っていることがわかったので、後は
どうしようか、思案していたのである。
捲簾は自分がそう思われているとも知らずに、自分の気持ちにとまどいを隠せないでいた。

FIN






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