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傷跡(天蓬&捲簾)


「まったく・・・しばらくいないと思ったら、そんなことになっていたんですか」
珍しく片づけられた絨毯敷きの天蓬の部屋で、捲簾はドアを開けるなり、もたれかか
るように倒れ込んだ。
とりあえずこの部屋まで歩いてくるのがやっとだったようで、ごろんと寝っころがっ
たまま、体を起こそうともしない。
もちろん、天蓬の膝枕状態なのは言うまでもない。
「ああ、ゴウジュンには見栄はっちまったが、結構効いたぜ、あの懲罰は」
クックックと笑ってみせるが、所詮は立ち上がれないほどの傷である。
笑ったひょうしに体が揺れ、傷口の痛みに顔をしかめる。
「っ!」
「ほら、いわんこっちゃない。無理をして天帝の前でカッコつけるからですよ」
「そうは言うけどなぁ、俺はあの連中が我慢ならんのよ」
痛みに顔をしかめながらもまっすぐな瞳でその言葉をつむぐ捲簾は美しい。
「納得行くか?あのナタクがちまいなりで殺戮を繰り返し、一緒に言った奴らは討伐
隊とは名ばかりで、ナタクの陰に隠れて無傷でいやがる。これはゴウジュンにも言っ
たんだが、奴らの前で一度言ってやりたかったのよ。そんな風に考えるのはくだらな
いことかね?」
その質問に天蓬はにっこりと笑って答えた。
「そんなことはありませんよ。普通の考えを持っていれば、少なくとも納得行くと言
うことは無いはずです。ただ・・・」
「ただ、どうした?」
「どうしても保身を考える人たちにとって、ナタク太子は非常に都合のいい殺戮人形
なのでしょうね」
「ケッ、胸くそ悪い」
「まぁ、私にとってはそれは一般的な解釈で、本当はどうでもいいことなんですけど
ね」
天蓬の手が軽く捲簾の髪の毛をなでる。
「ぁあ?」
「私にとってはあなたがいれば他はどうでもいいことですから」
「・・・!」
顔を真っ赤にし、口をぱくぱくさせる捲簾。
「と、言うことで、懲罰房の連中は死刑確定と言うことで」
そこでにっこりと笑う天蓬の目は笑っておらず、捲簾は体の痛みよりも自分を貫く氷
のような冷たさに一瞬我を忘れそうになった。
「大丈夫ですか?まだ傷がだいぶ痛むようですね」
そういって、まだふさぎ切れていない傷に手を当て、気功術で傷の周りの気の流れを
促進させる。
簡単な傷ならこれであっという間に直ってしまう。
前線でも天蓬のこの治療のおかげで何度命を救われたことか。
「くっ・・・」
再び体を駆け抜ける痛みにさらに気が遠くなるが、今度はその感覚に身を任せた。
「まぁ、この治療は傷の周りの気の流れを早めるものですから、痛みは少しよけいに
感じてしまうかもしれませんね。ただ、痛みを感じると言うことは、それだけ傷口の
周りが元気に活動していると言うことですから、もう少し我慢してくださいね」
「・・へいへい、わかりましたよ・・・っつーことで、後よろしく」
目を閉じながら、ひらひらと手を振ると、捲簾は眠るように意識を失った。
その寝顔に天蓬はくらくらしながらもしばらくそのままでいることにした。
心地よい膝の上の重さを感じながら・・・

FIN

2000 05/19 written by ZIN
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