RUN2(悟浄&八戒)




ふぅ、朝か・・・
昨日は参った。
よくこれだけ考えの似た奴が集るもんだと昨日の夜に思ったことをふと思い出しながら、どうしようか考えたあげく、俺は起き抜けに八戒の部屋を訪れる。
相変わらずこいつは俺がいついきなり訪ねてもいやな顔一つしない。
柔らかい笑顔で出むかえ、自分が吸わないタバコを目の前で吸われても特にかまわない。
こんな瞬間がずっと続けばいいと思う。
だが、この瞬間がこの長い一生の中でどれぐらいの価値があるのかと計りたくなるときがある。
そんな話を昔こいつにしたら、うれしそうに笑った後に「僕たち妖怪にはあまり時は関係ないのに。あなたはそんなことも考えるんですね」とか言ってたっけ。
そして、相変わらずのとりとめのない話を始める。
それでも、ちゃんと聞いてくれる。
こいつとのつきあいも大分長くなった。
初めてあったときは死ぬことしか考えていなかったこいつが、いまは柔らかい笑顔で俺を見ている。
生きる事なんて簡単だと思っていた。
こいつに出会うまでは。
人生なんて誰にとってもふつうで、俺以外の奴らなんて、どうでもよかった。
人と出会うことなんて特別だと思ったこともなかった。
多くの時間は自分にとって、流れるモノであって、何の意味もなく、人とのつながりは、うっとおしいだけであって、自分には何の価値もないと思っていた。
自分は禁忌の子供。
どこかにそういう思いが常にあったのだろう。
狭く、浅く、食えればそれで十分。
そんな生活に、こいつが終止符を打ってくれた。
生きることの意味、死ぬことの重み、出会いの必要性。
「おまえはただの行き倒れだ」
そういってごまかしているのは俺の方。
おまえに会えたからこそ踏み出せた。
大切なモノを見つけたから。
守るべきモノを見つけたから。
共に歩ける存在を見つけたから。
俺はようやく歩き出せる。
この長い旅路の第一歩を・・・


突然八戒が俺の顔をのぞき込み、まっすぐなまなざしで俺に問いかける。
「ずっと一緒にいてくださいね」
少しだけ、間をおく
「あぁ?」
答える返事は決まっている。
だから俺はおまえにこう言おう・・・
「・・・おう」

FIN






1999 04/26 wrihted by ZIN
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