戦いの先にある物(天蓬&捲簾)




「よぉっしゃあ!ラストひっとっり!」
さほど気合いを入れるほどの相手でもないくせに、大げさに暴れてみせる。
黒を基調としたエナメル系の戦闘服を身にまとい、一騎当千の働きを見せる。
これが捲簾大将の戦い方であった。
「いやぁ、相変わらずお仕事が早いですね」
物陰に隠れるようにしていた白衣の男がぱちぱちぱちと、手を打ちながらゆっくりと姿を見せる。
元帥の地位にありながら、捲簾のサポート役に徹する。
天蓬元帥である。
「さすが、あなたの通った後には草一つ生えませんね」
ほめているのか、けなしているのか、解らない表現で天蓬は捲簾に近づいてゆく。
「おまえがゆーな」
ジト目で天蓬の背中越しにみる物陰には死体の山が存在していた。
「あはは、バレちゃいました?せっかく少しでも大将の負担を少なくして差し上げようと思っ
ただけなのに」
あくまでも飄々と。その実大将程度では計り知れない器を持ちながら、天蓬はこの男の副官と
なっていた。
「優秀な副官がいて俺は嬉しいよ」
捲簾が両手を広げて肩をすくめて立ち去ろうとすると、天蓬もそれに続く。
「お褒めに与り、光栄至極」
「ぷっ」
「くすっ」
「あっはっはっはっは!」
おおよそ戦争した後とは思えないその台詞に二人は大きな声で笑った。

そう、この二人は一人でも一騎当千。
今回の戦争は2人対、妖怪軍団であったのだ・・・

「しかし、こう戦争ばかり続くと、さすがにしんどいですね」
二人は前線基地もかねている、司令部に戻ってきた。
「そうだな、戦争屋の俺には都合がいい話だが、あんまり続きすぎるのも問題だな」
二人の話の内容は至ってまじめな話であったが、その司令部の二人を見たらとてもそんな話を
しているようには見えなかったであろう。
二人の体勢は、床に天蓬がすわり、膝枕に捲簾がよこたわり、耳掻きをやってもらっていると
ころであった。
「おそらくどこか、よからぬ事をたくらんでいる輩がいるのでしょう。それが本当に妖怪なのか、はたまた神族なのかは知りませんけどね」
「相変わらずの問題発言だな。そんなだから、周りに嫌われるんだぞ」
天蓬の口元がにやっとわらう。
捲連のほほを軽くつまみ上げ、平然と言い放つ。
「私はあなたに嫌われなければ、それでかまいませんよ」
「いてててて、それが、嫌われたくない相手にする態度かよ。全くとんだくせ者だぜ」
「そのくせ者を好きになったのでしょう?」
相変わらずの抑揚のないほほえみで天蓬は耳掻きを続ける。
「けっ、そうだよ。俺が惚れたのは、後にも先にもオマエ一人だ」
捲簾はちょっとだけ視線を外に向け、はにかんだような感じがした。
それは天蓬の見間違いだったのだろうか・・・
「それはよいことです。さぁ、終わりましたよ。いつまでも、膝枕をしないでください。結構
痛いんですから」
「ん?あ、そりゃわりぃ。さぁてと、出来の悪い部下の様子でも、見にいくかな?」
捲連は立ち上がり、軽く頭を降ると、一休みは終わったとばかりに司令部を出ていこうとする。
「ちょっと待ってください」
「ん?」
司令部を出ていこうとする捲簾を呼び止め、天蓬はドアを開ける前に捲連に近づいていく。
捲簾が振り向いた瞬間に軽く唇をあわせ、天蓬はドアを勢いよく開ける。
「さぁ、もう一踏ん張り行きましょうか!」
「・・・しゃあねぇやつ」
頭をかきながら、捲連もその後に続く。
この二人の前には敵はいないのだろう。

そう、たとえ、ほかの時代に転生したとしても。

FIN







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