戦いに疲れたあなたへ・・・(八戒&悟浄)
「どうしたんですか?悟浄、今日はあんな初歩的なミスで、怪我をするなんて、貴方らしく
無いじゃありませんか」
恒例となりつつも、最近はめっきり減った紅孩児の刺客が今日、久しぶりに現れたのだが、
その戦いで悟浄は左腕に攻撃を受け、怪我をしてしまったので、宿に戻ったところで、早速
八戒に治療を受けているところであった。
幸いにも、怪我は、そんなに深くはなく、利き腕でもなかったために、戦闘にはほとんど支
障がなく、これまた恒例の通り、三蔵側の圧倒的な勝利によって、戦闘の幕は閉じられたの
であるが、八戒は悟浄の最近の戦闘への取り組み方に疑問を持っていた。
「なぁ、八戒、俺はちゃんと戦えているか?」
八戒の問いにしばらく沈黙をしていた悟浄が、ようやく開いた唇から紡ぎ出された言葉は、
その一言であった。
悟浄はほかの二人の前ではともかく、八戒の前では、意外にも素直になることが多かった。
「充分戦えていると思うのですが、何が不満なのですか?」
悟浄は包帯の巻き終わった左腕を軽くさすりながら、八戒の質問に答えた。
「そうか・・・ならいいんだが・・・」
煮え切らない悟浄の答えに八戒は多少のいらだちを感じた。
しかし、珍しく悟浄は真剣に悩んでいるようだ。
ほっておくわけにはいかない。
「まったく、貴方はあの二人の前では決してそういう表情を出さないくせに・・・」
八戒は多少あきれた顔で一度言いよどむ。
「で、どうしたいんですか?」
もう一度、悟浄の目をまっすぐに見つめて聞き直す。
「俺は、強くなりたい・・・八戒や、悟空を見ていると、俺の強さって言うのは所詮並なん
じゃないかって思う。いや、やっかみとか、そういうんじゃなくて、なんていうのか、本質
的な強さってのが、根本的に違う気がする訳よ」
「それは・・・」
「いや、わかってはいるんだ。ただ、たまにふと思うと、圧倒的な開きがあるんじゃないか
ってな」
そういって悟浄は苦笑した。
「あなたは十分強いですよ。妖怪としてはね。ただ、悟空は存在そのものがもともと違うし
、僕だって、一朝一夕で強くなったわけではないんです。
力ののばし方が、まだ足らないのかもしれませんね。自分の弱さを知ることはもちろん大切
なことですが、強さをのばす方法を見つけることも大切なんですよ」
悟浄はそう語る八戒の顔をまじまじと見つめた。
「どうしたんですか?そんなに不思議そうな顔をして」
「いや、俺のことよく見ているんだなぁって・・・」
「当然です、好きな人のことをよく見ないでなにがわかるというんですか?相手を知れば知
るほど好きになる。そんな相手を見つけたからこそ、僕は幸せなんです」
思いっきりまっすぐにそういわれて、悟浄は自分の髪の色に近いぐらい耳まで真っ赤になっ
た。
「そういう正直な反応をしてくれるところも大好きですよ」
そういって、八戒は包帯を巻き直した腕をぽんっと軽くたたくと、立ち上がりざまに悟浄に
軽いキスをした。
「なっ?!」
またもや八戒の突然の行動に驚きを隠せない悟浄
「自分の弱さを知った後は、相手と自分を比べて、どれだけ劣っているかをはかるのではな
く、どうしたら、その相手に近づき、追い越せるのかを考えればいいと思いますよ。自分を
落としてもなにも始まりませんから」
そういって、八戒は悟浄の部屋を出ていった。
悟浄は一人部屋に残り、ベッドに腰掛けたまま、片膝を抱えた。
「まったく、よく見てるよ・・・俺だって結構あいつのことをみているはずなのにな」
テーブルの上にあるたばこに手を伸ばす。
「ふぅ・・・」
濃い煙をはき、抱えた膝越しに正面にある壁を見据える。
「どうやれば追いつけて、どうやれば追い越せるかを考える・・・か」
その言葉をつぶやいた悟浄の瞳にはもう、迷いはなかった。
FIN
1999 11/07 wrihted by ZIN
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