つよさのゆくえ(悟浄&八戒)





「くっ、やっぱしかっこつけるんじゃなかったなぁ・・・」
悟浄は肋骨をやられたまま八戒の運転を代わり、一番近くの町までやってきたが、三人をそれ
ぞれの部屋に放り込んだ後、一人の部屋で自分の治療を行っていた。
「妖怪といっても、結局痛みは感じるし、再生するのも人間よりは早いっていうだけで、結局
時間がかかることには変わりないからな」
ベッドの上で一通りの治療を終えた悟浄は肋骨に負担をかけないようにしながら、ゆっくりと
ベッドに寝ころんだ。
「あいつも無理を重ねているからなぁ。どうも、無理を承知で平気な顔をする傾向があるから・・・」
「だれが、無理を承知で平気な顔をしているんですか?」
「!?」
悟浄が声のした方向を見やると、八戒が開いたドアに寄りかかって、悟浄の方をみていた。
「ん?」
「ドアが開いていたので」
「あぁ、開いていたか・・・」
そういうと、悟浄は枕元にある煙草を口にくわえ、すっと火をつけた。
「またそうやって、寝煙草を・・・」
八戒はあまり元気そうではないが、悟浄の寝るベッドに腰を下ろした。
「いいじゃねぇか。お袋には夢でだいぶいわれているんだから」
「そうなんですか?」
「?!あ、やべ・・・」
「ふふふ、どうしたんですか?そんなことを口走るなんて」
上を向いたまま、自分と視線を合わせない悟浄の上に覆い被さるように、八戒は悟浄の顔をの
ぞき込んだ。
「けっ、さすがに疲れたんだよ。あの馬鹿猿のせいでな」
「また、そんなことを・・・」
「ホントのことじゃねぇか。三蔵を助けようという気持ちは別にかまわねぇが、そのせいで、
俺らまで、痛い目にあっちゃ意味がねえじゃねぇか。まぁ、あのときにどれだけほかの解決手
段があるかどうかはしらんけどな」
悟浄は目の前の八戒の顔をみても、とくに大した反応をせずに今日の状況を解析して見せた。
「なにか、僕をみているようですね」
「ん?そうか?」
「ええ、ホント、そうですよ。どうしたんですか?普段と全然違うじゃないですか」
「少しは考えることをしていかないと、本当に置いてかれちまうからな」
そういうと、目の前にいる八戒を手でよけて、煙草を消した。
「くっ・・・」
右の肋骨を痛めていた悟浄は自分の煙草を利き腕で消し、力を込めたときの痛みでよろけた。
「まったく、無理をしているのはどっちだか」
「・・・ざまぁねぇな」
いつものようににやけた悟浄であったが、その笑みは力を持ってはいなかった。
「ゆっくり寝てください。私は気孔ののおかげで回復が早いですから、大丈夫ですよ。安心し
てください」
ゆっくりと悟浄を寝かせ、掛け布団をかけた。
「ま、しゃあねぇな。とりあえずめんどくせぇことは、直ってから考えるとするか」
そういうと、張りつめていた気がゆるんだのか、悟浄はすぐに寝入ってしまった。
それとも八戒が近くに来たからだろうか・・・
寝静まった悟浄を見届けてから、八戒は自分の部屋に戻るためにそっと悟浄の部屋の扉を閉め
た。
「もっと強くならなければいけないのは、僕ですよ、悟浄。悟空に元に戻してくれと言われた
のに、結局瀕死の三蔵の力に頼るしかなかったのですから」
悟浄の部屋のドアに寄りかかり、廊下の天井をしばらく見つめていた八戒はしばし下を向いた
後に自分の部屋へと向かった。
「つよく・・・つよく」

FIN






1999 12/12 wrihted by ZIN
1994-1999 MEGA-Company Co.Ltd ALL Right Reserved
MEGA-Company本館へ 同人のページへ