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うつむいた後は前を向こう


「ん?どうした?」
悟浄は八戒の目に光る物を見つけた。
「いえ、ちょっとつらい夢を久しぶりに見たもので・・・」
「そうか・・・」

・・・

久しぶりに花喃の夢を見た。
やっぱり花喃は僕に謝ってばっかりで。
そして僕はやっぱり悲しかった。
それでも、花喃に夢の中でも会えることはとても嬉しかった。
最近は思い出すことも少なくなってきていたから。
「ごめんね・・・一緒に生きていられなくてごめんね」
自分ではどうしようもなかったのに、夢の中の花喃はやはり謝っていた。
にっこりほほえんで逝ってしまった彼女はどんな気持ちだったのだろう?
悲しかったのだろうか?
寂しかったのだろうか?
僕の手からナイフを奪い取り、それを両手に逆手に持って自分のおなかを引き
裂いた彼女はにっこり笑った瞬間、とても美しく感じた。
『一緒にいようね』
『ずっと一緒だといいね』
そんな言葉を僕に言ってくれた花喃と、目の前で真っ赤な血を流して息絶えて
いく花喃は一緒で・・・
でも、信じたくなくて・・・
僕はその後、人では亡くなってしまった。
絶望を逆なでされた激昂はとどまることを知らず、圧倒的な力の差がありなが
らも彼に向かっていってしまった。
結果として彼の戯れで僕は人でなくなってしまったのだけど、結局花喃の血を
見た瞬間にすでに人の心を無くしていたのかもしれない。
自分の引き裂かれた場所と同じ場所を彼も引き裂き、そして絶命させる。
他の妖怪と同じように、花楠と同じように痛みやつらさを味合わせたかった。
人が妖怪を抹消する。
本来あり得ない能力の差を一つの思いでやってのけた。
その時点で。
すでに百眼魔王の城についたときには人でなくなる覚悟もできていたのかもし
れない。
永遠・・・
一緒・・・
微笑・・・
花喃の柔らかな手も。
花喃の優しい声も。
もう夢の中でしか聞けない。
夢の中でしか会えない。
ふれることができない。
一つになることもできない。
それでも、僕は生きて行くしかないのかな?
こんなにつらいのに・・・
こんなに悲しいのに・・・
生きなきゃいけないのかな?
自分の存在なんて、花喃がいなければこんなにも意味のない物だったなんて・・・
初めて気がついた。
そして、久しぶりに思い出した。
自分はいったい・・・
そう思った瞬間、そう思い出した瞬間・・・
大粒の涙が頬を伝った。

・・・

「ん?どうした?」
悟浄は八戒の目に光る物を見つけた。
「いえ、ちょっとつらい夢を久しぶりに見たもので・・・」
「そうか・・・」
「何も聞かないんですね」
悟浄は無言で八戒を抱き寄せた。
八戒は悟浄に涙を見せないようにして、その胸に顔を埋めた。
「・・・スミマセン」
「それでも、俺達は生きてるんだなコレが」
「え?」
その言葉に八戒は涙を隠すことを忘れて悟浄の顔を見る。
「それでも、俺達は生きていて、先を見ないといけないんだよ。いちいち振り
返っているヒマなんてないの」
少しだけうつむいた後、八戒は顔をもう一度上げた。
「・・・そうですね」
無理に笑顔を作ったけれど、八戒はもう大丈夫。
悟浄はその手を離した。
「そろそろ帰ってくるな」
「ええ、そろそろ出発ですね」
「いい顔だ」
「元の作りがいいもので」
クスリと笑う八戒の顔に迷いは無かった。
大丈夫、人は自分で歩いていける。
たまに寄りかかることもあるけれど、大丈夫。
思い出に引きずられても
悲しみに打ちひしがれても
もう一度前を見よう。
足下を確認しよう。
上を向こう!

そして・・・

歩きだそう。
少しでも大丈夫。
一歩づつ確実に前に進んでいるんだから。

FIN

2000 06/04 written by ZIN
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