呼び方(天蓬&捲蓮)




「天蓬さ〜ん、天蓬元帥さんや〜い」
天界一の武将と呼ばれる捲蓮大将は、おおよそその実力とはかけ離れた猫なで声で自分の相方
である天蓬元帥を捜していた。
「そう言う探し方は勘弁していただけませんかねぇ?」
ようやく扉の一番奥から顔だけのぞくようにして捲蓮の方をみる天蓬は、相変わらず本を片手
にメガネを頭の上にずらした状態であった。
「だって、なかなか呼んでも出てきてくれないもんだから、こうやって呼んだ方がいいかな?
ってね」
「勘弁してください」
あきれかえったように天蓬は、またメガネをおろし、本に戻ろうとする。
「オイオイ、せっかく返事したのに、またもどっちゃうの?また呼んじゃうよぉ〜?てんほう
さぁ〜ん」
またもや妙な呼び方を始めた捲蓮にさすがの天蓬も、たまらずに顔を見せる。
「だから、やめてくださいってば。ハイハイ、で、何のようなんですか?僕だって、忙しいん
ですから」
「ん?外の桜があんまり綺麗なもんだから、一緒に花見でもしようと思ってよ。こんな暗いと
ころで本ばっかり読んでないで、外にでも出ようや」
しばし、自分のいるところと、本の山と、手にした本を見つめた天蓬は、ちょっとだけ考え込
んだ後、うんとうなずいた。
「それもいいですね、一冊だけもって、外に出るとしましょう」
「やっぱり持っていくんかい・・・」
多少はあきれつつも、外に出ることに同意してくれたことで、捲蓮はご機嫌である。
「いやぁ、久しぶりに日の光を見ますね。気持ちいいものです」
うーーん、っと、のびをして、暖かい日差しを体いっぱいに浴びる天蓬。
「ま、オマエさんにはいい気分転換になるんでない?」
といった捲蓮の右手にはすでに二つのお猪口が握られていた。
「飲めって?」
くすりと笑いながらも、杯を受け取る天蓬。
「まぁまぁいっぱい」
「おっとっとっと。ですか?」
「くっ」
「ぷっ」
お互いに思わず吹き出してしまう。
「花見でいっぱい。というところでしょうか?」
「じゃあ、夜に月見でいっぱいやるか?」
「いいですねぇ」
「とりあえずはこの風景を楽しみますか」

二人はそのひとときをゆっくりと過ごした。

FIN







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