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初夏の勉強会(八戒&悟空)


「ん〜、やっぱむずかしいなぁ」
悟空は八戒に読み書きを教わっていた。
さすがに18歳にもなって、基本的な読み書きができないようでは困ると言う三蔵の
言葉から意地になった悟空が結局の所、八戒の教えてもらうことになったのだ。
「これは結構簡単な方なんですけどねぇ。こっちからやってみますか?」
さすがに昔子供を教えていただけ有って、コツをつかんでいる。
悟空はある意味純粋すぎる子供なのだ。
八戒は以前三蔵にそう聞いたことがある。
だったら、自分もそう接してあげればいいのに・・・
そういったら、三蔵は一言、「それはオマエの役目だ」とだけ言った。
ある意味、それは三蔵の照れだったのかもしれない。
「あ、これならわかる。とりあえずこっちからでイイかなぁ?」
「全然かまいませんよ、順番にわかるところからやっていきましょう」
にっこりとほほえんでやると、悟空は嬉しそうに問題を解き始めた。
その姿は身なりは18であるが、小学生に近く感じる。
真剣に取り組むのはその問題の内容が食べ物に関する物だからであろうか。
「好きこそ物の上手なれ。とはよく言ったものですね」
八戒が苦笑すると、悟空は不思議そうに八戒の顔を見る。
「どうかしたの?」
きょとんとした顔もかわいい。
とは表情に出さずに、素直に答えてやる。
「ことわざという、言葉の組み合わせですよ。もう少したくさんの言葉を覚えたら、
悟空も作ってみると面白いですよ。食べ物に関することわざもありますから、今度一
緒に考えましょう」
「うん!わかった!」
そういって、目の前の問題集に集中を戻す。
真剣に取り組むときの集中力はものすごいのだ。
当然の事ながら、悟空に負けん気を起こした悟浄もこの勉強会に参加していたのであ
るが、あっという間に飽きてしまったので、さっさと外に遊びに行ってしまった。
捨てぜりふはおきまりの、「俺はベッドの上で学ぶので精一杯なのよ」という言葉で
あった。
「今度僕にも教えてくださいね」
といった八戒には何も返事できなかったのは言うまでもない。
初夏であり、昼過ぎには勉強をするにも暑くなってくるだろう。
午前中はまだ風も柔らかく、過ごしやすい。
日差しが強くなり始めた外を窓から見やって、思わず目を細める。
目の前の悟空は一生懸命に問題を解いている。
三蔵は朝から町の寺院に出かけたままだ。
悟浄はどこかで適当に時間をつぶしているだろう。
自分は・・・
この幸せなひとときを感じていられれば、それでいい。
戦いに明け暮れる日々。
喧噪に飲み込まれる日々。
そんなことを忘れて・・・
日差しに目を細め、柔らかい風を頬に受け、大好きな人とひとときを過ごす。
一緒にいる空間を感じることが愛しい。
そんな感覚を自分がまだ持っていることに少しだけ安心する。
もう、あのときに幸せなんて一緒においてきてしまったと思っていたから。
力でこの子にかなう者はいないだろう。
そしてまっすぐに三蔵だけを見つめる瞳。
自分はその支えになればいい。
今はこの空間を大切にしよう。
暖かく見守ろう。
自分の正直な気持ちと共に・・・
「ん?八戒、どうしたの?」
悟空がまた自分を見上げる。
「何でもありませんよ。お茶にしましょうか」
「うん!」

FIN

2000 05/23 written by ZIN
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