おいしいご飯の意味(八戒&悟空)




がしっ!
悟空が料理をしている八戒の後ろから突然抱きついてきた。
「うーーーーっす、はよん、八戒!」
「ああ、悟空ですか、びっくりしましたよ。突然後ろから背中に乗っかってくるんですから。ど
うしたんですか?こんな早くに、まだ朝ご飯にも早いぐらいですよ」
「うーーんとね、正直に言うと、昨日遅くまで出かけていたじゃん」
「はい」
「それでね、あんまり疲れたから、そのまま寝ちゃったんだよ。そしたら、おなかがすきすぎて
起きちゃったってわけさ」
悟空は、頭をかきながら言う。
「なるほど、それで、朝ご飯のにおいにつられてきたというわけですね」
「まぁ、そんなトコ。まだ食べられないの?」
「ええ、もうちょっと待っててくださいね。ご飯だけなら炊けているので、おにぎりでよろしけ
れば少し先に食べますか?」
「え?ホント?さんきゅーだから八戒って大好き!」
そう言った悟空は本当にうれしそうである。
八戒が、炊きあがったご飯をおにぎりにしている間、悟空はそれを見つつ、早く食べられる期待
に胸を膨らませていた。
「八戒って、本当に料理うまいよね。誰かに習ったの?」
「ええ、姉にね・・・」
そう言った八戒の顔は少し暗くなった。
「あ、ごめん、別に深い意味があったわけじゃないんだ。いつもおいしいご飯を食べさせてくれ
てるから、どうやったらそんなにうまく作れるのかなぁっておもっただけなんだよ」
「わかってますよ。大丈夫です。私には姉がいたことは知っていますよね」
「うん、しってる。昔、八戒がみんなに話をした程度だけどね」
「それで十分です。花楠・・あ、姉の名前ですが、彼女はとても料理にうまい人でした。それ
も、ただおいしいと言うだけではなく、料理に暖かさのある人でした。私は、そう言う料理が作
りたくて、よく教わったモノです」
「なるほどねぇ。それで料理がおいしいんだ。でも、おいしい以上に暖かさってどうやって作る
の?確かに、八戒の料理は、食堂で食べるものよりも、おいしいって言うより、暖かいって言う
表現の方がしっくりくるけどさ」
「簡単なことですよ。相手の気持ちを考えて作ればいいだけです」
「それだけ?」
「ええ、それだけです」
「そんなんでうまい飯が作れるんだったら、オレだって作れるよ」
「そうですよ、本当はカンタンなんです、ご飯を作る事なんて・・・でも、それを人はなかなか
できない・・・」
「そうだって、オレなんか、いくら作ってみたって、ふつうにさえ食べられないんだから」
悟空は、自分で作ったご飯を想像したのか、ぶーたれてしまった。
「いえいえ、それはまだほんのちょっと気持ちが足らないだけなんですよ。まず、自分がどんな
ものを食べたらおいしいかを考えて、それから、あの人だったら、こういう味の方が良さそうだ
な。とか、もっと、おいしくするにはどうしたらいいかな?とか考えながら作るだけでいいんで
す。最初の自分がおいしいものって言うところで、努力するのがこつですけどね」
「ふうん、そう言うものなんだ」
「そう言うものです」
八戒は、悟空がおにぎりを食べ終わったところを見計らって、みそ汁を出した。
「お、さんきゅ・・・なるほどね。相手の気持ちを考える・・・か」
珍しく、悟空はみそ汁をのぞき込みながら、考え込んでしまった。
「オレも誰かのことを考えながら、何かをすれば、強くなれるかな?」
「強くなれるかどうかはわかりませんが、少なくとも無駄にはならないと思いますよ。それ
に・・・」
「それに?」
「誰かのために自分が強くありたいと思うのはとてもよいことだと思います。自分が強くなれ
ば、相手を悲しませることもないですからね」
「なるほどね。何となくわかったような気がするよ。朝からむずかしこと話したら、これだけ
じゃ足りないや」
「わかりました。もうそろそろご飯ができますから、他のお寝坊さん達をおこしてきてくれます
か?」
「うん、わかった」
「ここで、おにぎり食べたことは内緒ですよ」
「わかってるって」
ぱたぱたと走っていく音が聞こえ、寝室の方で、にぎやかなやりとりが始まる。
「そう、あなたの教えてくれた味は私にとって非常に役に立っていますよ、花楠。そしてあなた
のことを忘れないためにも、僕はおいしい料理を作れるようにがんばるつもりです。彼らが少し
でも元気になれるように・・・」
「おーい、みんな起こしてきたよぉ・・・」
また、一日が始まる。
さぁ、ご飯を食べて、元気よく行こう!!
新しい朝に向かって。


FIN






1998 1/1 wrihted by ZIN
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