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うつろわざるもの(八戒&悟空)


「こんなところで、どうしたんですか?」
八戒は石段の一番下に腰掛け、自分の手をじっと見つめる悟空を見つけた。
先日も紅孩児の刺客が訪れてはいたが、特に怪我は無かったはずだ。
「ん?・・・あぁ、八戒か。別に・・・何でもないよ」
傷を負った、と言うよりは、悩んでいる、と言ったところか。
「悟空が何でもなく一人で自分の手を見ていたりするんですか?」
隣にしゃがみ込み、一緒に開かれた悟空の手のひらをのぞき込む。
特に怪我をしていたり、病気になっていたりするわけではなさそうだ。
「じっと手を見る・・・ですか?」
にっこりと笑って、悟空の顔をのぞき見る。
「そんなんじゃないけどさ。闘って、闘って、戦い抜いて、その先に何が見
えるのかな?ってさ」
視線を手のひらからはずさずにぼそっとつぶやく。
思ったよりも、しっかりと自分の存在というか、立場について悩んでいるよ
うだ。
「日がな一日ぼんやりしているよりは、何かをつかめるような気がしません
か?」
「え?」
ぼんやりと手のひらを見つめていた悟空の視線が、八戒の顔を見つめる。
相変わらず綺麗な金色の目をしている。
禁忌の子供。
生き物ならざる存在。
そんなことすらもどうでも良いことだと思わせてしまう存在感。
「それこそ、闘って、闘って、力つきるまで闘うその先に、何もないわけ無
いじゃないですか。何もしないで文句ばかり言う人に比べれば、むしろ着実
に前に進んでいると思いますよ。何もないなんて、考えないで下さい」
ゆっくりと話す八戒の言葉を受け止め、うなずきながら、悟空の視線は迷い
を無くしていった。
「うん、そうだね。それこそ、悩んだってしょうがないんだ。目の前の障害
は力で取り除く。それが俺のやり方だモンな。頭で考えるのはヤメだ。さん
きゅな、八戒」
すっくと立ち上がると悟空はまっすぐと遠くを見つめ、その後八戒に向かっ
て、礼を言った。
「いえ、僕は何もしていません。お礼を言うのは僕のほうかもしれませんね」
弱い苦笑をしながら、八戒も立ち上がった。
「夕飯にしましょうか?」
「いいねぇ。今日はなに?」
「ちょっと時間が無かったので、カレーにしちゃったんですけど、イイです
か?」
「うん、OK!ちょうど久しぶりに食べたかったんだ」
「その分、量はたくさんあるので、思いっきり食べて下さいね」
「いえ〜い。やったぁ!!」
飛び上がらんばかりの悟空を見て、八戒は安心した。
そして自分も救われていることに気がつく。
何も変わらない存在。
移ろわざる者はすぐ近くにいるのだ。
自分と供に。

FIN

2000 08/07 written by ZIN
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