AfterTheHappyBirthDay






「こんにちわぁ」
八戒は指定された街のはずれにある宿屋に着くと、おそるおそる扉を開いた。
「ハッピィバースディ!!」
パン!!パパン!!!
ものすごい音とともにクラッカーが鳴り響く。
紙テープが乱れ飛び、八戒は一瞬で、紙吹雪と、紙テープまみれになってしまった。
「!!??」
目をぱちくりさせて、驚きの表情を隠せない八戒。
「おせぇじゃねぇかよぉ」
悟浄が待ちくたびれたと言わんばかりに八戒のヨコから肩に腕を回す。
「やっぱあれか?新聞に紙切れを挟むって言うのはわかりにくかったか?」
悟浄は三蔵の方をちらりと見る。
「フン」
当の本人は相変わらず、知らぬぞんぜぬを決め込んでいるようだ。
「八戒おめでとー!これ、プレゼントね」
と、悟空が差し出した包みは有名な御菓子店の包み紙であった。
「これを僕に?」
「うん、こないだたまたまつまんだら、ものすごくおいしかったからさ、八戒にも食べてもら
おうかな?って」
それを聞いていた悟浄が横から茶々を入れる。
「それで、同じものを作ってもらおうってか?」
くっくっくと、バカにしたような笑いに悟空はむっとした表情になる。
「今日は八戒の誕生日だから、暴れたりしない。でも、八戒、ホントおいしいから食べてみて
ね。まぁ、できれば作ってくれたりしたら、すごく嬉しいけどさ」
とりあえず言うだけ言うと、悟空は元の話の輪の中に戻っていく。
その中には、紅該児と李厘がいた。

・・・

「紅該児と李厘??!!!」
思わず口をぱくぱくさせてしまう八戒。
一方向のみを見て固まっている八戒を見て、肩に手を回したままの悟浄が説明を入れる。
「ん?ああ、あいつらね。なんか、おもしろそうだったんで、兄貴に声かけたら、おもしろそ
うじゃんって、のってくれたのよ。ま、せっかくだから、いろんな奴呼んじゃおうかってね・・・」
アハハ。とわらいながら、悟浄も独角の方に歩いてゆく。
悟浄がたばこを取り出すと、独学が火をごく自然につける。
「さんきゅ」
悟浄は紫色の煙を吐き出すと、まだ固まっている八戒に声をかける。
「おーい、いつまでも固まっていないで、さっさと目の前のお姫様の相手してやんな」
気がつくと、やおねが目の前でどうしたらいいのか、とまどっていた。
「あ、スミマセン・・・」
いまだに事情を欲の見込めていない八戒はどうしても、対応がはっきりしなくなってしまう。
「いえ、今日は、八戒さんの誕生日と言うことで、敵とか、味方とかではなく、一日楽しく過
ごしましょうと言うことなので、おじゃまさせていただきました。いちおう、私たちからのお
祝いと言うことで、どうぞ」
やおねから渡されたその包みは、そんなに大きくなく、アクセサリーのようであった。
「あけてみてもよろしいですか?」
「ええ」
やおねの柔らかな肯定の笑顔に、八戒は思わずほっとする。
包みを丁寧に開けると、その中から出てきたのは、八戒がいつも止めている右胸のひもと、ボ
タンの替えであった。
「ありがとうございます。なんか気を使っていただいて」
「いえ、気に入っていただければよろしいんですけど、何をお渡しいたらいいか解らなくて、
そんなものになってしまいました」
「そんな・・・、ありがとうございます。大切にしますね」
「ほっほっほ・・・若い者はいいのぉ」
はっとして、二人が振り向くと、そこには玉面公主お抱えの科学者、王老師がいた。
「あ、あなたまで?ひょっとして、彼も来ているのですか?」
やおねは思わずある特定の人物を指摘してしまう。
「へぇ、気にしてくれているんだ・・・。ま、愛しのご主人を守る者としては当然でしょうけ
どね」
足音もなく、やおねの後ろから現れた人物はたった今やおねが来てほしくないと思った当の本
人、ニィジェンイーその人であった。
「ひゃあ!!」
やおねは思わずびくっとして、八戒にすがりつく。
「初めまして・・・ですよね?お二方?」
「おっと、さすがは三蔵一行のブレイン、猪八戒どの、なかなか落ち着いてらっしゃる。自己
紹介が遅れましたな。私は玉面公主サマの元で、研究をさせていただいている王(ワン)と言
う者ですじゃ。これ、健一、挨拶しておけ」
「はいはい、言われなくてもしますよ。初めまして、王老師とともに、玉面公主さんのところ
で、研究している健一(ジェンイー)ともうします。これから、いろいろ楽しめると思うんで
、ご期待くださいね。」
いつも持っているのか、ウサギのぬいぐるみを片手にハートがつきそうな口振りでやおねと八
戒をのぞき込む。
「ホラ、あんまり長くくっついていると、王子サマがやきもちをやきますよ」
やおねはその言葉に、自分が八戒の腕の中にいることを思い出し、八戒から飛び退く。
そして、すぐに紅該児の方を振り向くが、幸いなことに、紅該児は悟空、李厘と談笑している
ところであった。
やおねはほっと胸をなで下ろし、改めて二人の科学者を見つめた。
「そんなに怖い顔をしなさんな。今日は何もせんよ、なぁ、健一?」
「ええ、もちろんです。せっかく八戒さんのお誕生日会にお呼ばれしたんですから、楽しいひ
とときを過ごしましょうね」
二人はそういいながら、自分たちの研究メンバーの中に戻っていった。
その中には八戒を興味深そうに見つめている黄の顔もあった。
「ひょっとして、みなさん来てらっしゃるのですか?」
八戒はちょっと引きつった顔でやおねに訪ねる。
「えっと、それはどこまで聞いてます?」
おなじくやおねもあまり聞いてほしくないと言う表情を全面に押し出して、それでも一応答え
る。
「まさかとは思うんですけど、玉面さんも来ていらっしゃったりするんじゃあ・・・」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!

部屋の奥の方で、大きな完成があがった。
「ん?」
二人は顔を合わせてその声の挙がった方へと足を向ける。
その光景を見た瞬間二人は思わず固まっていた。
八戒は本日2度目の硬直である。
玉面公主と、観世音菩薩が将棋で対戦していたのである。
「ほほう、そうくるか・・・なかなかやるな。妖怪にしておくには惜しい・・・」
当然のごとく、その傍らにはいつでも戦えるように臨戦態勢を整えている、次郎神が控えてい
た。
「そっちこそやるじゃない。神って、もっとつまんない存在だと思っていたわ」
こちらにはさっき八戒の前に現れた。研究員、健一が横に控えていた。
「玉面サマ、今日の主役が・・・」
八戒が近づいてきたのを見つけると、健一が玉面にそれを告げる。
「おう、八戒、今日は誕生日だそうだな、ま、妖怪は年をとらないが、めでたい日には変わり
ない。こうして珍しい相手とも対局できたからな。来てよかったぞ」
「はぁ、ありがとうございます」
思わず間の抜けた返事をしてしまう。
「あぁら、ウチの息子たちがいつもお世話になっています。くす。まぁ、もう言うのもいいん
じゃないかと思って、来てみたんだけど、ホント、結構楽しめるわね。アタシが言うのも何だ
けど、おめでと。また企画してね」
二人とも言いたいことを言うだけ言うと、また対局に戻った。
いったいこの二人は何をしに来たのだろう・・・

「しかし、ものすごいメンバーですねぇ。この様子ですと、三仏神様たちもいそうですね」
やおねに語りかけたつもりの八戒であったが、そのやおねが自分の背中の後ろを見て硬直して
いるのを見て、自分の仮定が正しかったことを悟った。
八戒はゆっくりと振り替えり、自分たちを西へと向かわせた張本人たちに挨拶をした。
「これは、三仏神様、ご機嫌麗しゅう」
「うむ、直接参加はできないので、映像のみでの参加であるが、ゆるせ。楽しんでくれるよう
、そこの会計はすべてこちらで持つようにした。思う存分堪能するがよい」
「ありがたきお言葉。有意義な時間を過ごさせていただきます」
「うむ、それではな」
三仏神は一通りの挨拶を済ませると、回線を切断した。
「あちゃあ、そんなメンツまで来てくださるとは思いませんでした。なんか、オールキャラっ
て感じですね」
「ええ、私なんかもう、誰がだれだか・・・」
そのまま二人は適当なテーブルをとり、楽しいひとときを過ごし始めた。

宴もたけなわになった頃・・・
ピンポーン
貸し切りの宿屋に呼び鈴が鳴った。
「はーい、今日はあいにく貸しきりなんですけど・・・」
宿の女将が応対を始めたようだ。
皆は気にしないでそれぞれの時間を楽しんでいる。
「はぁ、ええ・・・解りました。お渡しすればいいのですね」
女将が入り口から帰ってくると、その手には少し大きめの包みがあった。
「差出人が不明なんですけど、これを八戒さんにって・・・」
女将もとまどいを隠せないまま、八戒にその包みを渡す。
意外に重さがある。
「なになに?八戒、誰かからのプレゼントか?」
「いえ、私にプレゼントをくださるなんて、ここの方たち以外には・・・」
「だれか、宅配の手配した奴いるのかぁ?」
皆はこぞって首を振る。
「だれでしょうねぇ・・・」
「あけちまえよ」
「そうですね」
八戒はおそるおそるその包みを開けてみる。
中から出てきたのは飾り気のない段ボールの箱であった。
「??」
ますます不思議な包みに、八戒と悟浄は顔を見合わせる。
周りのメンツも自分たちの宴に飽きてきたのか、その包みを覗こうと、八戒とやおねのテーブ
ルに集まってきた。
「なんだなんだ?」
「早くあけて見せろよ」
せかされるように八戒は少しずつ箱を開けた。その中身を見た瞬間、全員が凍り付いた。
そう、まさに凍り付いたという表現が正しいだろう。
中にあったのは、花に包まれた清一色のミニフィギュアだったのである。
しかもあけたとたん、ご大層に首が上の方を向き、持っていた花を差し出したのである。
「永遠の22歳おめでとう、猪悟能。あなたに愛を込めて」
その人形がにやっと笑った瞬間、八戒はやおねを押し倒し、大きな声で叫んだ。
「みなさん、ふせて!!」
全員が防御姿勢をとった直後、その人形は包みごと爆発した。
だが、それ自体が爆発しただけで、さほどの被害はなかった。
「まさか、あの人までお祝いしてくれるとはねぇ・・・」
「でも、あいつって、死んだんじゃねーの?」
一番近くで見ていた悟空が、ぼそっとつぶやく。
「そうですね、でも、かれなら、やりかねませんよ。もう、ごめんですけどね」
八戒は苦笑しながらも、やおねをおこし、怪我がなかったことを確かめると全員に話し始めた。
「お騒がせしました。そして、みなさん私の誕生日に集まっていただいてありがとうございま
した。最後はとんでもないことになってしまいましたが、とても楽しかったです。こういう機
会はほとんどないでしょうが、また楽しめるといいと思います。お疲れさまでした。そして、
本当にありがとうございました!」
八戒が頭を下げた瞬間、一同から、拍手とお誕生日おめでとうのコールがあがった。
なんにせよ、自分の誕生日を祝ってくれるのは非常に嬉しいことだと喜びをかみしめる八戒で
あった。

FIN






1999 09/26 wrihted by ZIN
1994-1999 MEGA-Company Co.Ltd ALL Right Reserved
本館へ 別館へ 家庭用ゲームNEWSへ 特殊飲料愛好会へ Galleryへ