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夢の中へ(悟空)


アイツは帰ってくるって言った。
帰ってくるって言ったんだ。

「ねぇねぇ、天ちゃん、ナタク、早く帰ってこないかなぁ?」
天蓬元帥の部屋の真ん中に置いてある、半分本に埋もれかけたソファーに盛
大に寝そべり、相変わらず本に没頭している部屋の主に話しかける。
「ん〜、そうですねぇ。今回の討伐はナタク大志にしてみれば、そんなに大
きな戦火では無いはずだから、程なく帰ってくると思いますよ」
少しだけ顔を上げ、悟空の問いにはしっかりと答える。
適当に相づちをうつ金禅に比べ、悟空がかまってもらえる天蓬の部屋に入り
浸るのも解るという物だ。
しかし、本当のところは、金禅を一番信用していることを天蓬も解っている
ために、一番深いところまで、入り込んだりしない。
それはお互いのためであり、金禅のためでもあることを天蓬は解っていた。
せめて、戦火がこの場所に直接来るまでは、平和に楽しく過ごしたい。
それが実際の戦火ではなく、水面下の卑しい争いであっても、この子を巻き
込みたくないと素直に天蓬は思っていた。
「早く帰ってこないかなぁ〜。帰ってきたらさぁ、こないだ見つけた木の上
にまずつれていってやるんだ。すっげー夕焼けが綺麗だったんだ♪。そんで、
桃の木で実を食べてぇ・・・」
悟空の話はとりとめがない。
およそ天界のほとんどを冒険し尽くしたかのような印象を受ける。
事実宮廷内部以外はほとんど制覇したと言っていいだろう。
おかげで仕事が増えた役人が星の数ほど・・・
「アイツは帰ってくるっていったんだよな・・・」
突然雰囲気の変わった悟空に天蓬は視線を上げる。
本を置き、悟空の近くに行くと、悟空は仰向けに寝っころがり、目を閉じて
いた。
「寝言・・・かな?」
思わず苦笑する。
寝言までもまっすぐなのだ。
「はらへったぁ〜」
いつもの悟空だ。
「しかし・・・ナタク大志か・・・あれほどの武人が実父とはいえ、なぜ李
塔天にあれほど忠誠を誓うのか・・・」
綺麗な顔の眉間にしわをよせ、窓の外を見る。
暖かい陽気は悟空を睡眠へと誘うには十分すぎたようだ。
「さて・・・続きを読むとしますか」
一通り、外を見て気分転換した後、また天蓬は自分の場所にもどり、読書を
始めた。
薄い肩掛けを悟空に掛けてやり、お腹を冷やさないようにすることも忘れず
に。

アイツは帰ってくるって言った。
帰ってくるって言ったんだ。

涙を浮かべた悟空の寝顔に、天蓬は気がつかなかった。

FIN

2000 09/19 written by ZIN
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