HappyBirth Day

「誕生日だな」
「そーだね」
「ふん、くだらん」
「あ、やっぱし三蔵はそういう反応なんですねぇ」
あははーと、八戒は三蔵を見て苦笑した。
旅の途中。
共に旅をはじめてから3回目の誕生日。
桃源郷は元々時の流れが遅いことから、実際の年齢を重ねているのかははなはだ疑問ではあるが、八戒は誕生日を迎えていた。
「って、結局オマエが飯を作るのね」
目の前のご馳走をみやり、悟浄もつられて苦笑する。
当然のごとく悟空はいつもどおりに目の前の食べ物に目を輝かせていた。
本日はきちんとケーキにろうそくまで立っていたりする。
「八戒〜。この火がついているのは食えるのか?」
「いや、さすがに食べられないと思いますよ。普通のろうそくですから」
「ちぇー、ケーキって上に乗っているものまで食えるって、何かに書いたあったから、ろうそくっぽく見えるけど、それも食えるものでできているのかと思っちゃったよ。損したー!」
「おいおい」
悟浄はその悟空の言葉に呆れ顔だ。
「相変わらず食うことしか考えないあほザルめ」
三蔵は我関せずといった態度を崩さない。
「バカっていうなー!」
「別に三蔵はバカとは言ってないぞ。あほといったんだ」
「どっちもおんなじようなものじゃないかー!うがー!!」
「あ、キレた」
「フン」
「まぁまぁ、せっかくなんだから、食べましょうよ。刺客も今日は襲ってこないみたいですしね」
「あぁ、最近は少なくなったなあ」
「紅骸児さんが指揮をとらなくなったらしいですよ。やおねさんが寂しそうに言っていました」
「えぇっ?!八戒、やおねと会っているのか?!」
悟浄が取り乱したような態度をとる。
「なんで悟浄がそんなに驚くんだよっ!?」
「ちっ。んなことはどうでもいいんだよ!それより、八戒。何かされてたりしてねーのか?それとも情報を探られたりとか」
「いえ、そんなことはぜんぜんありませんよ。たまに買出しのときに街で見かけて、お茶を飲んだりするぐらいです」
「それって、でぇとっていうんじゃ・・・」
バシン!
という音と共に、悟浄が悟空を殴る。
「なんだよ、いってぇな!何で俺が殴られなきゃいけねーんだよぉ!」
「けっ!俺はつまんねーから部屋に帰るぜ」
「あ・・・悟浄・・・」
「ふん、くだらん。飯が冷えるぞ。とっとと食っちまえ。食わないやつがいる分、悟空の食う量が増えるだけの話だ」
「お?そうだなっ♪わけわかんねー悟浄はほおって置いて、早く誕生日会やろーぜ。俺もうはらぺこだよー」
「うーん・・・それはそうなんですけど・・・。やっぱり僕悟浄を呼んできますね」
「勝手にしろ。先にやってるぞ」
「それはどうぞ」
「わぁい♪」
早速食べ始める悟空。
三蔵も適度に料理を自分の皿に取る。
「仕方ない人ですねぇ」
八戒は悟浄の部屋へと向かった。

コンコン。
悟浄の部屋の扉をノックする。
「いますか?」
返事は無い。
「いますよね。あけますよ」
ガラガラと、引き戸を開けると、悟浄は窓の外を見ていた。
「僕がやおねさんとあっているだけで、そんなにふてくされることは無いんじゃないですか?」
「・・・そんなんじゃねーよ」
くゆらせたタバコが少しだけ寂しい。
「どうしたんですか?」
「せっかくの誕生日だってのに、あまりにも普通どおりで、その上他の女と外で会ってるなんて、イヤじゃねーか」
「そんな、すねた子供じゃないんですから、やめてくださいよ」
「ふーーーっ。そんなつもりはなかったんだけどな」
大きく吐き出した煙が窓の外へと消える。
ゆっくりとゆっくりと。
「さて、行くか。みすみす悟空に全部食われることはねーからな」
「結構立ち直りが早くなりましたね」
「ま、ちっとは気にするけどな。いちいち落ち込んでもらんねーだろ。そういう関係なんだしな」
ぽんと八戒の肩をたたくと、悟浄は部屋の外に出た。
「あぁ、そうですね。まぁ、そんな関係だと思いますよ。うん」
「行くぞ」
「はいはい」
二人はそろって宴会場へと戻った。
そろそろ三蔵が悟空の相手にキレかけているところだろう。
今年でもう三年目。
浮気も多めに見るところであろうか。
まだまだ旅は続く模様。

FIN



2002 09/21 written by ZIN
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