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ある雨の日(やおね)

「わたしは雨って好きだなぁ」
やおねは自分部屋の窓にもたれかかり、小雨が降り続く外をぼんやりと眺めていた。
主君である紅該児はまた何事か公主に密命を受け、出かけてしまった。
独角は当然のごとく紅該児を追いかけていった。
やおねも当然同行を申し出たが、李厘の事を頼むと言われては、無理についていくことはでき
なかった。
「はぁ・・・」
ため息が漏れる。
「そういえば、八戒さんは雨が苦手だったのよね」
やおねは普段カモフラージュとして喫茶店を運営しているが、先日ひょっこりと店に現れた八
戒はそんな事を話していった。
「敵同士なのにね」
くすっと思い出しわらいをするやおねの顔に闘っている相手を憎む表情はない。
「紅該児さまも雨は好きではないとおっしゃっていたわ」
それを思うと自分の気持ちは紅該児と少し違うことを意識してしまう。
自分が雨を好きだと思うのは、ある時、傘を差さずに濡れているやおねに紅該児が傘を差して
くれたからであった。
あまつさえ相合い傘で帰ることができたやおねにとって、その瞬間は筆舌に尽くしがたい人生
最大級の至福の時であった。
単純だなと自分でも思う。
それでも、雨を見ているとあのときの瞬間が思い出され、幸せに浸ることができる。
「八戒さんはつらい思いでしかないのかな?」
そう考えるとやおねは悲しくなった。
紅該児もつらい思いでしかないのかもしれない。
雨が嫌いな人たちは思い出に思いを寄せている人が多い。
昔を引きずっていると言った方が正しいのかもしれない。
「もっと今を感じていればいいのにな」
もたれかかった手の甲に頬を当て、降り続く雨を見つめる。
「あ・・・でもあんまり幸せというわけでもないか」
てへっと自分の頭をこずく。
自分はあこがれの相手と供に行動し、不思議なことだが、敵とも悪い関係ではない。
そんな幸せな立場の存在なんて、滅多にないのだろう。
ふと見つめると、李厘が外に出てきたようだ。
中庭で最近見つけてきた犬と戯れているようだ。
最近雨が続いていたので、部屋の中で遊ぶのに、飽きたのだろう。
「あ・・・あぶない」
ぱしゃぱしゃと水しぶきをあげて、犬と戯れ、どんどんどろんこになって行く。
それでも李厘はとても楽しそうだ。
「あ、転んだ。いかなきゃ・・・」
苦笑しながら、やおねは席を立つ。
大きめのバスタオルを用意して、軽く走る。
雨の日はこんなにも楽しい。
みんなそう思えたらいいのに。
やおねはそう思っていた。

FIN

2000 06/22 written by ZIN
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