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「っつーーー?!!」 崖から転がり落ちた後、悟浄は気を失うことなくすぐに起きあがった。 周りには大量の雪。 すぐ近くには悟空のブーツが逆さまに見える。 「くっそー、あのガキども、見つけたらただじゃおかねぇ!」 ぶんぶんと長く赤い髪の毛にまとわりついた雪を、頭を振ってはらうと悟浄は立ち上がった。 「・・・ただじゃおかねぇとどうなるんだい?にぃちゃん?」 その声に振り返るとにやっとした男が自分を見つめている。 「・・・・誰だ?」 その男はふっと肩をすくめて見せた。 「こういうのはおきまりのセリフなんだが、人にものを尋ねるときは自分から名乗るもんだぜ?にぃちゃん」 「ちっ!くぇねぇやつ」 「まぁ、お互い様だ。ところでその辺に埋まっているのはお仲間さんかい?何なら助けてやらんこともないが」 「ハン。こいつらは殺したって死なねぇ奴らばっかりだ。ちょっとこづいてやれば起きるさ。おい!悟空!いつまで寝てやがる!さっさと気がつきやがれ!」 げしげしとブーツを蹴ってみるがいつもの反応はない。 三蔵はまだ顔が半分でているからいいものの、八戒にいたっては姿自体が確認できない。 「んーー、俺はそろそろ行くが、どうするかね?」 もういちど男がにやっとして悟浄の顔を見る。 「・・・ぐぅ。・・・頼むわ。掘り起こすのと助けるのを手伝ってくれ」 「あいよ」 その男は肩に担いでいたスコップを使い、手慣れた手つきでまずは悟空を掘り起こしていく。 出てきた悟空の顔は蒼白で、すでにだいぶ冷え切っていた。 男が手伝わなければ、いくら岩の精霊である悟空でも息絶えていたかもしれない。 続いて三蔵を掘り起こす。 顔は悟空に比べればだいぶよいが、体はかなり芯まで冷えてしまっているようだ。 それは雪の中から引き抜いた男が顔をしかめたことからも容易に推測できた。 「八戒?!八戒はどこだ?!」 がさがさとそこらじゅうを手で掘り起こしてみるが八戒が見つからない。 「ん?もう一人いるのか?いい加減早く見つけてやらないと、危険だぞ。こいつらも早めに火のあるところで暖めないとまずいだろうし・・・」 「そんなこたぁ、わかってんだよ。だが、八戒はみつけねぇといけねぇんだ・・・」 少しだけ男の方を振り向くが、また黙々と八戒を探し続ける。 「わぁったよ」 男も一帯を丁寧に探すが、なかなかみつからない。 時間にしたら数分であるが、悟浄にとっては何時間もたっているように感じた。 「おい、これ!そうじゃないのか?」 男が緑色の上着のすそを見つけた。 黒い縁取り。 確かに八戒のものだ。 悟浄はその男の元にすっとんでいき、丁寧に掘り起こす。 徐々に身体が現れ、八戒が姿を現す。 「八戒・・・」 いちおうそんなに顔色は悪くなっていないようであるが、三蔵や悟空よりも長い時間雪の中に埋まっていたのである。 早く暖めねばと気が急ぐ。 「おう、とっとと運ぶぞ」 「んあ?どこに?」 「俺の住処だ。そこなら火もたいてあるし、食い物もある。さっさと運ばないと特にその細いにぃちゃんはやばいぞ」 「えっ?あぁ、そうだな。すまないが、そいつらを任せてもいいか?」 「あぁ、力は俺の方がありそうだからな。担いでやるさ」 「さんきゅ、助かる」 そうして男は悟空と三蔵を肩に担いだ。 「ん?思ったよりも軽いな、こいつら。あんましいいものくってねぇんじゃねぇか?」 わっはっはと笑う。 「生臭坊主はしらねーが、ちび猿は偉い勢いで食うぞ。食料なんてあっというまに食い尽くされるからな」 「そいつは楽しみだ。さて、行くとするか。また吹雪になりそうだ」 「あぁ、すまねぇな。案内を頼む」 悟浄は八戒を抱え上げ、背中に乗せた。 なるべく自分の身体に密着させ、自分の体温で暖めるように運ぶ。 「ふっ」 「なんだ?」 男のゆるんだ笑みに悟浄はいぶかしげな視線を送る。 「なんでもない。ところで名前は?」 「悟浄だ。沙悟浄」 「耶雲だ、よろしくな、悟浄」 にかっと笑う笑顔はどこか兄の沙慈燕ににていた。 「あぁ」 二人は耶雲の住処へと急いだ。 雲は重く立ちこめ、また吹雪になりそうな道のりであった。 ゼロサム6月号で崖から落ちた直後のお話です。 この後、インタラプトへと続き、本文へと続く訳ですね(^^;; よろしければ、ご感想を掲示板へお願いします〜 |
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