新しい始まりの朝(4人)




さすがに冷え込みの厳しい元旦の朝、4人は前日の宴会後に年越しの挨拶を済ませ、珍しく一
緒の部屋に寝ていた。
「あ、やべー!」
悟空は寝ていた顔に窓から斜めに差し込む光を受け、飛び起きた。
窓の外を少しだけのぞき、こくりとうなずくと、ダッシュで外へと飛び出していった。
「んぁ?」
ばたばたと騒々しい音に悟浄は眠たそうな顔をあけっぱなしとなったドアに向けた。
「あの猿はなにあんなにあわててるんだ?」
上半身を起こし、寝床に美しく乱れた長い髪の毛をうっとおしそうに掻き上げ、隣に眠る八戒
に問いかけた。
「初日の出を見に行ったんじゃないですか?昨日、初日の出とは何かって聞かれましたから」
目をつぶったまま、全く起きる気配がなかったのに、八戒は悟浄の問いかけにしっかりと応じ
る。
「初日のでぇ?あいつがそんなものに興味を抱くとはねぇ。食い物以外にキョーミなんてあっ
たんだ」
そのまま倒れるように枕に頭を埋める。
「なんか、4人で迎える新年は今年が初めてだから、みておきたいようなことをいっていまし
たよ。悟浄はいかないんですか?初日の出」
「ぁあ?めんどくせぇ・・・でも、まぁ、このメンツで迎える新年っていうのも悪くはねぇな」
もそもそと寝床から這い出した悟浄は、ズボンを履き替え、上着を羽織ると、八戒に外に行く
よう促した。
「へぇ、珍しいですね、悟浄がそんなこというなんて」
そういって八戒はそこで初めて目を開けた。
その顔は明らかにすでに目が覚めていたようだ。
「悟浄のお誘いとあれば、いかないわけにはいきませんよね?」
「そんなこといって、準備万端だったくせに・・・」
「あ、やっぱりばれちゃいました?」
そういって、二人は悟空の後を追うように部屋から出ていく。
出かけに八戒は未だに布団から起きあがらない三蔵に声をかけた。
「せっかくですから、みんなでみませんか?悟空も4人そろった方がうれしいでしょうし」
その言葉に三蔵は無反応だったが、そんなことも気が回らないよな三蔵でないことを八戒はわ
かっていたので、それ以上はいわないことにした。
「それじゃ、先に行っていますね。あんまり遅くなると、朝日とは呼べなくなっちゃいますよ」
それだけいうと、部屋のドアを閉めた。
「くだらん・・・」
八戒の手によってドアが閉められた直後に三蔵はうつぶせのまま、顔を上げた。
「くだらんが、わからんでもない」
そのまま腕を突っ張るように状態をあげ、軽くのびをした。
「仕方ない奴らだ」
ベッドから降りると袈裟を羽織り、部屋の外へとでていく。

「悟空!」
宿の屋上に上がり、八戒が悟空に声をかける。
「八戒!!こっからだと、すげー綺麗だぜ!!」
屋上で一番東の場所を陣取って、悟空は八戒と悟浄を呼び寄せる。
確かに地平線から後少しですべての姿を現そうとする太陽をここからみる風景は絶景であった。
「三蔵は?」
心配そうに悟空があがってきたメンバーに三蔵がいないことを指摘する。
「あぁ、なんか、まだベッドの中にいたぜ」
悟浄がそう答えると、悟空は少しがっかりしたような顔をした。
「大丈夫ですよ、すぐに来ます」
「・・・だれがくるって?」
「ほぉら」
八戒が三蔵に見えないように苦笑する。
悟空はうれしそうに三蔵にまとわりついた。
「三蔵、三蔵、みてみて、初日の出!」
「そんなにさわがんでいい、馬鹿猿、もう、みている」
そういって、三蔵が太陽に目を向けると、ちょうどすべて出きったところであった。
今まで、人工の光によっててらされるのみであった町並みが、黄金色の光に満たされてゆく。
太陽の強力な光に満たされてゆく世界は非常に美しかった。
世界が破滅に向かっている・・
そんな言葉はこの美しさの前にどんな意味があるだろうか。
そして、太陽は4人を照らし出し、三蔵の見事な金髪をきらめかせる。
4人はしばらくようやく姿を現した太陽を見つめながら、沈黙を続けた。
「行くぞ」
三蔵がほかの3人を促して、部屋に戻るように言う。
「ええ、そうですね」
「おう」
「え?もう戻っちゃうの?」
悟空だけは、この感動にもう少し浸っていたいようであった。
「そんなもの、また来年もみればいい。気持ちの問題だ」
のべつまもない三蔵の言葉であったが、来年も一緒にみようという隠れた言葉に悟空は気がつ
き、うれしそうに三蔵の後を追いかけていった。
「さーんぞ!」
「ええい、まとわりつくな、うっとおしい!!」
「素直でいいですねぇ。三蔵は素直じゃないですけど」
その光景を見て八戒がぼそっと独り言を言う。
「いいんでないの?あれで、仲いいんだからさ」
悟浄は八戒の方に腕を回し、抱き寄せながら、部屋へと一緒に戻っていった。
今年も始まる。
西への道が・・・

FIN






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