thinking doll (八戒)




久しぶりに一人の時間ができた。

三蔵はたまたま泊まったこの町の町長にありがたい方だからと強引に押し切られ、朝も早く
から、説法をしに行ったようだ。
最近はあまりキレることもなくなったし、いい傾向なのかもしれない。

悟浄は昨日から帰ってきていない。
また、女でも見つけたのだろう。
相変わらずあの赤い長髪は、目立つらしく、町の酒場では早速声をかけてきた女の人たちがた
くさんいた。
昼過ぎになっても帰ってくるかどうかは怪しいが、いつものことだし、心配することもないだ
ろう。

悟空は珍しく、朝からいない。
いつもなら、「はらへったぁ」と、朝一番に起こしにくるものだが、ここは、自炊ではなく、
宿の人がご飯を作ってくれるために、さっさと食べてどこかへ出かけたようだ。
町に入る直前に三蔵になにやら話しかけていたので、それを確認しに行ったのかもしれない。

久しぶりに一人の時間ができた。
背中に当たるタイルの冷たさが気持ちいい。

彼らとともに過ごすようになってから、常に誰かが自分の周りにいるようになった。
花楠がいなくなって、ずっと一人だったから、最初はとまどったが、自分の居場所をようやく
見つけたみたいだ。

久しぶりに一人の時間ができた。
自分の足を抱え、床を見つめる。

なにをするでもないが、ゆっくりと時間が過ぎるのを感じるのもいいかもしれない。
今の僕が生きていることを感じていられるから。
こういう時間を感じることができるようになったのも、彼らのおかげかもしれない。

久しぶりにひとりの・・・

「ただいまぁ!はらへったぁ!!めしあるぅ??」
「うーーい、かえったぞぉ。めしだめし!んったく、あの女、ちくしょう、腹が立つ!!」
「かえった。ひょっとすると今日中にこの村を出るかもしれん。みな、人の話を聞いて、呆然
としていたからな」

一人の時間は終わったようだ・・・また4人の時間が始まる。

FIN







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