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その輝きとともに眠りたい(八戒&李厘)

「まったくこの子は・・・」
八戒はあまりに突然に遊びに来る派手な娘にほとほと困り果てていた。
確かに一度悩みを聞いたことがある。
それでもだいぶ突然だったのだ。
窓を開けていきなり人の家に入ってきて、悩みを聞いてくれも何もないだろう。
本当にそう思う。
それでも、いきなりベッドに入ってきて「眠いから寝る。その後でちょっと話聞いて」とい
って寝てしまった無防備な顔を見ていると、そんなにいやでもないのが自分でも不思議だ。
敵。
立場の図式から言えば、確かにそういえる存在なのだろう。
だが、自分でもその図式が必ずしも正しくないことは意識している。
紅該児が憎しみや、感情を元に自分たちを襲っているわけではない。
むしろ、純粋に戦闘を楽しんでいる分、戦いやすかったりするのだ。
全力で戦っても死なない相手。
人海戦術で攻撃を掛けるそのほかの敵と違い、紅該児一行は戦っていて気持ちがいい。
そんな気にさせる敵というのは八戒にとってもはじめてであった。
確かに戦争は個人の憎しみが入らないところで始まることが多いが、その中で好敵手として
相手が存在することはまれである。
「この子もそんな中の一人なんですよネェ」
同じ寝床で自分の胸に顔を寄せ、丸くなって寝ている女の子を純粋にかわいいと思う。
髪をなでてやると気持ちよさそうに体を寄せてくる。
こんな寝顔を見ていると、牛魔王の実子であり、玉面公主の愛娘であるとは思えない。
妖怪であることを除けばちょっとおてんばな女の子なのだ。
おてんばの規模が普通とは違うが。
「くすっ」
普通と違うということを考えてしまう自分に思わず笑みを漏らしてしまう。
「まだ自分が人間であることを基準にしてしまうんですね、僕は」
人と妖怪を比べること自体がナンセンスだと自分でも理解しているはずなのに、やはり人間
でいたときの期間が長いせいか、基本的に人を基準に物事を考えてしまう。
妖怪には妖怪の考え方があり、人間には人間の考え方がある。
自分が両方を実感してみて、初めてわかった。
それをわかった上でお互いを理解できれば、人間とか、妖怪とかそんなことは大したことで
はなくなるのかもしれない。
もっと言えば、この子ややおねのように、敵や味方という概念を越えて分かり合える存在に
なれるのかもしれない。
自分は?
自分たちは?
それはもう十分にわかっているはず。
相手がいるから行動を起こすのではない。
自分が自分であるために生きるのだ。
その相手が目の前で寝ているこの子でもいいと思う。
たとえ立場が違っても。
たとえ敵同士でも。
お互いを理解し合い、自分が自分であることに自信を持てるはずだ。
この子はそれを教えてくれる。
自分の存在に疑問を持たない。
どう生きるかを考えることが大切。
この子はそのことを自分と一緒にいる彼ら以上に示してくれるのだ。
だからこそあこがれるのかもしれない。
立場以前に光を感じる。
その光を身近に感じ、今ひとときの眠りを共有しよう。
そう思って、八戒はもう一度眠りについた。
暖かい光とともに・・・

FIN

2000 03/30 written by ZIN
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