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Old Timer(悟能)

「悟能!悟能!」
教会にシスターの声がこだまする。
「そんなに騒がなくてもここにいるのに」
悟能は読みふけっていた本から視線を上げ、教会の講堂で一人つぶやいた。
「悟能、こんなところにいたんですか。みなさん教室で待っていますよ。授業を始めさせて
ください」
はぁはぁと息を弾ませ、講堂でようやく悟能を発見した壮年のシスターは悟能に教室に戻る
よう、促した。
「すみませんシスター。あいた時間に静かなところで本を読みたいと思ってここで読んでい
たら、熱中してしまい、時間を忘れてしまいました。もうしわけありません」
「そうですか、わかりました。では早く戻って授業を始めましょう」
「はい」
素直な反応の悟能に、シスターはほっとした。
しかし、悟能はシスターが先を歩こうと振り返った瞬間に口元がゆがんだ。
「ふっ」

・・・

授業が始まる。
淡々と進む授業。
親のいない悟能にとってここは生活の場であった。
姉に会いたい。
自分に生き別れの姉がいることを知ったときから、身よりのない悟能は自然にそう願うよう
になった。
それにしてもつまらない日常。
授業で受ける内容は図書館の本ですでに熟知済みであった。
よけいな人間関係を持たない悟能にとって、本は知識の宝庫であり、一日の殆どを本を読む
ことに費やす悟能は図書館の本をあらかた読み終えてしまっていた。
「つまらない時間・・・」
春も近づき、桜が咲き始めた教室の外を見ながら悟能は一人つぶやいた。
シスターが前で何かをしゃべっているような気もするが、悟能にとってはあまり意味のない
内容なので、適当に聞いているフリをする。
当てられたところで、返答に困る内容ではない。
「神様ネェ」
講堂のてっぺんにある十字架を見て、悟能は目を細める。
「孤児院を作るきっかけになったという意味においてはあながち無能というわけでもなさそ
うですね」
さすがにその言葉は口には出さない悟能であった。

時は唯一、人に平等に与えられる。
そのひとときを悟能は有効に使えるのだろうか。
それは・・・悟能のみが決めることなのだ。

FIN

2000 03/25 written by ZIN
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