A Summer Day(悟空&三蔵)




「ねぇねぇ、三蔵、見てみて〜」
自分の部屋で相変わらず新聞を広げていた三蔵は、突然の来訪者に一瞬目を細めたが、すぐに
それがいつもの存在であることを認め、読みかけの新聞に目を戻した。
しかし、新聞に視線を戻した後に少しだけ間をおき、改めて悟空の方を見た。
「なんだ?その格好は?」
三蔵がいぶかしげな視線を悟空に向ける。
それもそのはず、悟空は、いつもの外を歩く格好ではなく、白いズボンに黄色いタンクトップ、
頭には麦わら帽子という格好であったのだ。
「ええーー?!いいとおもわない?いつもいつも、同じ格好じゃあ、飽きちゃうからさぁ。せ
っかくこれだけ暑いんだから、もっと楽な格好しなきゃ」
包みを片手にくるっと回ってみせる。
当然裸足だ。
「季節柄、開放的なのもわかるが、俺たちがなにを目的に旅をしているか、解っているんだろ
うな?」
あくまでも、自分の姿勢を崩さない三蔵に、悟空は、心底うんざりしたような表情を見せる。
「ま、たまにはいいじゃん?八戒もよく似合うって言ってくれたよ」
それでも悟空はめげない。
三蔵は”八戒”と言う言葉に少し眉を寄せたが、悟空は気がついていないようだ。
純粋に”似合っている”と言う言葉で喜んでいるらしい。
よけいなことを言ってくれたものだ。と、三蔵は、額に手を当てた。
「それで、その手提げの中身は何なんだ?」
聞くのが怖いのは解っていながらも、聞かなければ、おそらく悟空は、この部屋から出ていく
ことはないことを察し、一応聞いておく。
「よくぞ聞いてくれました!この中身は、ひまわりなのでーす!」
と、手提げの中からとりだしたのは、本当にひまわりをかたどったネックサークルと、ハット
アクセサリー、サンダルのセットであった。
「おいおい・・・それを身につけるつもりか?」
「そうだよ。えっと、こうして・・」
目の前で悟空は俗世間に飲み込まれていくのを目の当たりにして、三蔵は力無く、うなだれた。
しかし、飽きっぽいのも事実なので、街でこのような格好を見つけて、試してみたいと思った
だけなのだろう。
「かんせーい!!」
自分の着方に満足したのか、悟空は、大きな声とともに、仁王立ちになり、自分の格好を三蔵
に見せた。
「どぉ?」
「・・・ふん」
一瞬の沈黙。
「ああ〜!!鼻で笑ったなぁ。八戒はちゃんとどこがいいか、どうしたらいいか言ってくれた
のにぃ。ちぇっ!」
悟空はベッドにあがると、片方の膝を抱え、三蔵をのぞき見るようにした。
「ホントに似合わない?」
その瞬間の仕草に思わず三蔵は視線をはずす。
すぐに新聞で顔を隠したために赤らめたことは悟空に気がつかれなかったようだ。
「いい加減にしろ、出発するときまでに着替えておけばかまわないから、ほかでやれ」
いすごと後ろをむき、もう興味がないと言わんばかりにしっしっと、手を振る。
「ぶぅ〜」
悟空はすねながらも、怒らせるのは得策でないと考えたのか、静かに部屋を出ていく。
その理由が、自分の格好であることは解っていたが、本当の理由までは気がついていなかった。

悟空が出ていった後、三蔵は新聞を畳み、めがねを外す。
「ふぅ」
ため息を一つつくと、テーブルの上に投げてあったたばこに火をつける。
煙を深く吸い込み、もう一度大きなため息をつく。
「八戒もよけいなことをしてくれる・・・」
口からたばこを離すと、外を見る。
街の天気はいつにもましてまぶしかった。

FIN





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