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雨上がりの夜空に(八戒&三蔵)


ザアアアアアアアーーーーーーーーーー!!!!!
ばたん。
折しも夕刻近くに降り出した雨は激しさを増した。
「いやぁ、情緒も何もあったモンじゃないですね」
あはは、と、吹き込む風から部屋を守るために雨戸をおろし終わる
と、八戒は他のメンツに声をかけた。
「ま、そうそう風情のある雨ばっかりじゃねえってこったな」
「こんだけ降ったら、飲み物とか沢山できるのかなぁ?」
「んなわけねーだろ、この馬鹿猿」
「馬鹿っていうな、エロがっぱのくせに、風情なんて言葉使うんじ
ゃねーよ!」
「ほぉ、じゃあ、オマエは風情って、なんだか知っているのか?」
「へへん!しってるよ〜。その場の雰囲気が落ち着いていて、自分
の気持ちと一致することだろ?」
待ってましたとばかりに悟空は得意げに答える。
さすがの悟浄も言葉を失ってしまった。
「・・・なんでンナこと知ってんだよ?普段は食うことしか頭にね
ぇくせに」
「ヘンッだ!いつも女の事ばっかり考えている悟浄とは違うんだよ
!」
「いい加減にしろ、んったく、よけいな事ばっかりで喧嘩しやがっ
て、一番風情をコワしているのはオマエ等だろうが」
どっちにしろうるさいことには変わらないことを悟ったのか、成り
行きに任せていた三蔵が口を挟む。
「ええ〜、その『オマエ等』にオレも入っているわけ?」
「当然だ」
悟空の反論も所詮はなしのつぶてである。
「はいはい、意見がまとまったところで夕飯にしましょうかね・・
・」
八戒がまとめに入る。
「ゼンゼンまとまってネェって・・」
悟浄がさりげないツッコミを入れるが、取り合わない。
「わ〜い、ご飯ご飯〜」
すでに悟空の興味は夕飯に向いているようだ。
「先に茶をくれ」
三蔵もどうでもいいらしい。
「へいへい、わかりましたよ」
どっかりと近場のいすに悟浄も座る。

・・・

夕飯後。
「なんであんな事を悟空に?」
三蔵は一人台所の片づけをしている八戒に後ろから声をかけた。
「夜に後ろから気配を消して近づくなんて、悪趣味ですネェ」
そうは言っても、振り返る八戒の表情に取り立てて避難する色はな
い。
「どんなに気配を消したところで、オマエにわからないわけはない
だろう?今更何を言う。とりあえず習慣として、気配を絶っていた
だけだ」
「習慣で気配を消すお坊さんって言うのも、何ですネェ」
あはは、と、笑いながら、八戒は最後の洗い物を終え、布巾で手を
拭きながら、食卓テーブルのいすに着いた。
三蔵も続いて腰を下ろす。
「あ、お茶でイイですか?」
「別にかまわんが・・・」
「それともこっちにします?」
そういって、指先をくいっと傾ける。
「いいのがあるのか?」
「ええ、お昼の買い物で一つ仕入れておきました」
「準備がいいな」
「それが僕の取り柄ですから」
にっこりとほほえむと、八戒は席を立ち、冷蔵庫から、小さなグラ
スと酒の入った瓶を取り出した。
「まさかそこまで用意していたのか?」
「そんなわけはないですけどね」
苦笑するが、どこまで本当かは三蔵でも読めなかった。
「いちおう、3つほどは用意していたんですよ。ひょっとすると3
人かもしれないって思いまして」
「まぁいい。で?」
目の前にとくとくとつがれる酒を前にして、三蔵は話をうながす。
「ホント、深い意味はないんですよ。ちょっと彼には雨の意味を聞
かれただけでして」
目の前のグラスを見つめながら、八戒は語り始める。
「・・・」
「悟空に、『八戒や、三蔵はどうして雨にこだわるんだ?』って、
聞かれちゃいまして、一通りは話したんですが、あまり全部理解し
ていただけたようではなかったので、最終的にああいう方向へ逃げ
ちゃいました」
「ま、いいがな・・・」
ふぅと、ため息をつき、三蔵は目の前の汗をかいたグラスをあおる。
「イイ酒だ・・・」
「アリガトウございます」
三蔵は席を立つと、食堂としてあてがわれた部屋の窓から外を見や
る。
「夕立の後の夜空はなんて風情が有るんだろうな・・・」
『そんな夜空を見上げるあなたの姿も風情がありますよ』と心で思
いながら、八戒もその横で月明かりに満ちる空を見上げた。

FIN

2000 07/08 written by ZIN
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