1994-2001 MEGA-Company Co.Ltd ALL Right Reserved


過程、そして・・・(八戒&三蔵)


「おまえ、何を考えている?」
三蔵は声をかけた。
「いえ?別になにも・・・」
いつもの返答だ。
「ふん・・・まぁいい。悟空にだけはちょっかいをだすな。あれは俺の所有物だ」
「へぇ・・・珍しいですね。アナタがそんな事をわざわざ口に出して言うなんて」
「・・・ただでさえ、神とかいうよけいな存在が出てきているからな。混乱させな
い方が自分たちのためでもある」
「ふぅん。僕や悟浄の心配もしてくれているんですか?」
「けっ、おまえ達なんぞ知ったことか。俺は自分の為に生き、そして自分の為にな
ることのみをするだけだ」
「そうでしたね。アナタはいつもそうです。そして、沢山の物事を一人で背負って
しまう」
「よけいなお世話だ」
「そうでもないですよ。僕は特に悟空に対して何かしているわけではありません。
勉強をしたいと言うから知識を教え、解らないことを聞くから正しいと思った事を
教えているだけです」
「それがよけいだと言っているんだ」
「なぜです?沢山の物事を知って、その中から自分の思うところを選択する。良い
ことじゃないですか」
「アイツにはまだ自分で判断することはできない」
「そう言う風に勝手に決めつけるのはどうかと思いますよ。彼も充分この世界に慣
れてきていることですし・・・」
「それは・・・実際奴の記憶は凍結されているに近い。ものの資料によると、少な
くとも500年はあの石牢に居たことになるが・・・」
「そうでしょう。文献によると、天界での騒動があってから、丸500年。悟空は
少なくともその間一人で居たわけです。ましてや、以前の記憶や知識を欠落してし
まっている。これでは明らかに年齢よりも幼児的な行動に出てしまうことを非難す
ることはできません。当然、悟空を引き取ってからのアナタの教育にも問題がある
と言えますけどね」
「そんなことはない。アレにはやってはいけないことをきちんと教えて来たつもり
だ」
「それではなぜやってはいけないと思われるあなたへの抵抗をまだ悟空はしている
とお思いですか?」
「・・・それはアイツの物覚えが悪いからだろう」
「違います」
「・・じゃあ、なんだ?」
「それは判断材料が全くないからです。何故かと言えば、アナタは先ほどもおっし
ゃったように、よけいな知識を悟空に教えていない。確かにそれは一つの教育の仕
方であることであることは否めません。でも、悟空に知識を教えないと言うことは
、悟空に自分で生きることを拒否させていることと同義です。正しい行き方である
かは、自分で判断させるべきだと僕は思います。いけないことはやってみないと解
らない事柄もたくさんあります。何故ダメなのか。なぜ良いことなのか。それをき
ちんと理解させない限り、あなたの期待する反応を悟空は一生して返してくれない
かもしれませんよ」
「そういうことか・・・俺は別にアイツになにも期待しては居ない。ただ・・・」
「ただ?」
「アイツの声がずっと聞こえていたから、側に置いているだけだ。それ以上でもそ
れ以下でもない」
「それが素直ではないと言っているのです。自分が師匠に先立たれたことを。師匠
を救えなかったことを考え、側にいてやりながらも自分に近付きすぎないように配
慮する。確かにそれは自分の経験からは正しいかもしれませんが、悟空は少なくと
も妖怪ですよ。それもとんでもない力を秘めた。そんな彼の力をいつまでも封印し
ておけるとお思いですか?」
「そのためにあの金冠があるのだろう、よけいな金冠が・・・」
「僕はそうではないと思うのです。あれは、神様・・・観世音菩薩が悟空が自分の
力を自然に解放できるときまでの足かせとして、付けたものではないかと思ってい
ます」
「どういうことだ?」
「つまりは、アナタの元に悟空を置くことで、悟空に自我というものを素直に理解
させ、自分がどのような存在であることを解らせるわけです。その上で、本来の凶
暴な力を解放させ、自分の力で制御させる。実際にはあんなにも簡単に金冠を復活
させたぐらいですから、暴走したところで、すぐに復活できるのでしょう。という
ことは、悟空の力は500年前に比べて、制御しやすくなっていると考えるべきで
はないでしょうか?」
「制御・・・」
「そうです。それも自分の意志で。つまりはそう言う意味も含んでいる旅だと思っ
て居るんですよ、今回の旅は。僕たちにとっても確かに成長するための旅ではある
と思いますが、神様が一番期待しているのは実は悟空何じゃないでしょうか?と最
近すごく思うんです。圧倒的な力、圧倒的な存在感。金冠のはずれたときの悟空は
それはもう僕たちの手には負えないものでした。それでもアナタには制御できた。
それはアナタだけに与えられた力であると供に、悟空の成長を義務づけられたもの
と同じではないかとも思うんです」
「よけいな事だ」
「だから、そうではないんですよ。きっとあなた自身も気が付いていないかもしれ
ませんが、自分で悟空のことを常に一番に考えているはずです。たとえ結果的に自
分のみが犠牲になったとしてもね」
「願い下げだ」
「そうはいっても、どうしようもないんですよ。アナタの悟空に対する存在という
のはそう言うものであり、かつ、あなた自身もそれを望んでいる。そして、悲劇に
なる可能性を一番秘めている状態なのです」
「いつから俺にそんなに意見できるようになった?八戒」
「まぁ、良い機会ですから言わせてくださいよ。そこで、僕たちの出番となるわけ
です。悟浄には悪いですが、良くないことの見本を。そしてその中にある優しさや
心配りを感じて欲しい。僕は知識を。そして処世術、考え方、人の気持ちの動きを。
更に何よりも、アナタはその存在のすばらしさを、人が一緒に居ることの大きさを
教えて上げて欲しいのです。僕にはそういう事はできません。ましてや悟浄にも・
・・僕たちは僕たちだけ2人で完結してしまって居るんです。それはもうどうしよ
うもない。しかたないんです。でもあなた達は違う。意識的に押さえてきたからこ
そですが、まだまだ成長期なんです。でも、このままでは成長期のまま終わってし
まう。それだけはさけないと、あなた自身の悲劇と同じ事を繰り返すことになりか
ねませんよ」
「・・・」
「ということで、僕は少しずつですが、悟空に一般的な知識を教えていくことをや
めるつもりはありません。強制的にヤメさせてもかまいませんが、あまりオススメ
しませんよ。理由は今話したとおりですからね」
「勝手にしろ」
「ご理解いただいて嬉しいです」
「ただ・・・」
「はい?」
「いや、なんでもない」
「では・・・」
扉が静かに閉まり、八戒の正確がうかがえる退出となった。
一人三蔵はいすの上で手を組む。
煙草に延ばした手が空を切り、小さな舌打ちをする。
しばらくするといつも通りの紫煙が上がり始めた。
彼らの明日はまだまだ遠い・・・・

FIN

2001 01/27 written by ZIN
1994-2001 MEGA-Company Co.Ltd ALL Right Reserved

Main Site  ■Circle Site  ■GAME News Site  ■Cyber Drink Site
The Main System Produced By MEGA-Company. Generated from HAZER Operating System.