夕方その2(三蔵&八戒)




「いいかげん、何とかしてやれ、あのままではかなわん」
再び新聞に目を戻しながら、三蔵はめんどくさそうにつぶやいた。
「それから・・・その格好も何とかしろ。悟浄はともかく、オマエにそんな格好をされると、
恥ずかしくてかなわん」
八戒はくすっと笑うと、席から立った。
「おや?僕に欲情してくれるんですか?いつでも歓迎しますよ」
「冗談でもそんなことを口にするな。今度言ったら殺すぞ」
ひらひらと手を振りながら立ち去る八戒の背中に三蔵は恐ろしい言葉を本気で言う。
「殺されちゃ、かないませんからねぇ。気をつけるようにしますよ。それで、この後のお話は
、三蔵の部屋でいいんですよね?」
「ああ」
その言葉を聞いて、八戒はうなずくと、自分の部屋に着替えをしに行った。
「さて・・・と、」
三蔵は階段を上がっていく八戒を見送り、自分も立ち上がった。
「おや?もう、あがるのかい?」
「・・・」
ものすごいジト目でおばちゃんを見る三蔵。
「どうしたんだい?怖い顔して。いい顔が台無しだよ」
三蔵を相手におばちゃんは怖いものを知らないセリフをどんどん続ける。
「どうでもいいが、俺は今日昼からここにいるのだが?」
「あら、そうだったかしら?まぁ、いいじゃないの、もう少しぐらい、いたって」
そんな三蔵を気にもとめず、おばちゃんは続ける。
「だ・か・ら・・・まぁ、いい」
多少、反論を試みつつも、おばちゃん相手によけいな体力を使うのをあきらめたのか、めんど
くさそうな顔をしながら席を立つ。
「夕飯は後で上に持ってきてくれ。そうだね、1時間後ぐらいでいいか・・」
「はいはい、解りましたよ。老い先短い年寄りを、ありがたいお坊様が相手にしてくれないの
ね」
「ケッなにを今更言ってやがる」
「あ、やっぱり解る?」
「わからいでか。何年坊さんやっていると思っているんだ。俺はもう行くぞ。飯の支度は任せ
たからな」
そういい放つと、もうオマエの戯言を聞く気は無いと言わんばかりの態度で階段を上り、自分
の部屋へと戻っていく。
「はいはい」
いい加減あきらめたのか、おばちゃんも素直になったようだ。
そして、ようやく食堂に静寂が訪れる。

「ふぅ、静かなものだねぇ」
おばちゃんは一段落したことを感じ、三蔵への夕飯の内容を考えながらも、一休みと、適当な
いすに腰掛ける。
三蔵が消したTVを再びつける。
あまり見るべきものも無いのだが、適当に番組をまわし、当たり障りのない番組で手を止める。
「・・・」
ぼんやりとTVをみつめる。
「あの子たちもやっぱり行ってしまうのかねぇ。この物騒な世の中で、あんないい子たちが、
何で危険な旅をしているのかあたしゃ解らないよ」
もう一度大きなため息をつくと、おばちゃんは「よっこらしょ」と、立ち上がり、三蔵に頼ま
れた夕飯を作り始めた。
おばちゃんは彼らがこの世の行く末を握っていることを知らない。
ましてや、自分のところに止まっている彼らが、一人を除いて、南の森にすんでいる魔物など
足元にも及ばない最強の妖怪たちであるとは夢にも思っていなかったのである・・・

FIN





1999 09/05 wrihted by ZIN
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