川縁での午後(八百鼡&八戒)



「おや?」
八戒が珍しく一人で歩いていると、川縁でぼぉーーーーーっとしているやおねを見つけた。
「どうかなされましたか?」
「・・・・・」
反応がない。
八戒はもっと近づいてもう一度声をかけた。
「どうしたんですか?こんなところで?」
その声にびくっとすると、ようやくやおねは八戒の方を向いた。
「あ、あらあら・・八戒さんでしたか、ごめんなさい」
「どうしたんですか?思いっきりぼぉっとしていらっしゃいましたよ」
八戒は苦笑しながら、やおねの顔を見た。
「えへへ・・そんなにぼぉっとしていましたか?間抜けな顔だったんでしょうね」
やおねは顔を真っ赤にしながら、下を向いてしまった。
「いえいえ、そんなことはありませんでしたよ。遠くを見ているやおねさんもなかなかきれいでしたよ」
「そんな・・・」
さらに顔を真っ赤にして、照れまくるやおね。
今度の顔はさっきの恥ずかしさとは別の感情であったようだ。
「ところで、こんなところで、なにをしてらっしゃったんですか?」
八戒はそのやおねの気持ちを知ってかしらずか、話を進めてしまった。
「ええ、ちょっと、また失敗をしてしまって・・・」
「またというところがやおねさんらしい気もしますけど・・・そんなに大きな失敗だったんですか?」
「いえ、紅該児サマは気にするなと言ってらっしゃったんですが、ちょっと自分では納得行かなくて・・・」
「一体なにをしたんですか?また私たちに攻撃をしようとしていたとか?」
「そ、そんなことはないです」
やおねはあわてて否定した。
「そんなに力一杯否定しなくてもいいですよ。一応敵同士ですし、言いにくければかまいませんが」
「いえ、そう言う敵味方という意味で言いにくいのではなくてですね、そのぉ・・・」
「??」
八戒は、またうつむいてしまった、やおねの顔をのぞき込んだ。
「笑いませんか?」
本当に恥ずかしそうに八戒の目を見つめる。
「別に笑いはしませんよ、そんなに笑える話なんですか?」
にこやかに八戒は応対する。
「じゃあ、いいますけど、お料理のことなんです」
「へぇ?それで、なにをやらかしたんですか?」
「お塩を、お砂糖を間違えてしまったんです」
「??・・・・くすっ」
「あ、今笑いましたね!もぅ!わらわないって約束したのにぃ!ぶぅ・・」
やおねはつんと向こうを向いてしまった。
「ごめんなさい・・申し訳有りません、失敗事態に笑ったんじゃなくて、余りにありがちな失敗だったので、ついね」
「それでも、一緒です!せっかく笑わないって言うから、恥ずかしいのを我慢して話したのに、ひどいですぅ」
「ホント、ごめんなさいね。でも、そんな基本的な失敗なんて、やおねさんでもするんですねぇ。ちょっとびっくりしました」
「ええ?私なんか、失敗ばっかりですよ。いつも紅該児様は笑って許してくださるけど、さすがに今回の顔はつらそうでした」
八戒は紅該児が、塩と砂糖を間違えた料理を食べて苦い顔をしている姿を思い浮かべ、思わず苦笑した。
「でも、そんなにしょっちゅうというわけではないんでしょう?」
「毎日というわけではありませんが・・・」
「ならいいんじゃないんですか?紅該児さんもかまわないと言ってくれているんでしょう?」
「それはそうなんですが・・・」
「じゃあ、いいんですよ。この間食べたサンドイッチもおいしかったですし、十分じゃないですか?」
「そう言ってくださるとうれしいです」
「本当のことを言っただけですよ。じゃあ、私はそろそろ失礼いたしますね。そろそろ夕方なので、がきんちょが、おなかをすかせていることでしょうから」
そう言うと、八戒はくすっと笑って立ち上がった。
「あ、あの・・・」
「はい?なんでしょう?」
立ち去ろうとした八戒はやおねの言葉に呼び止められた。
「・・・こんど、お料理を教えていただけませんか?」
「??は?・・ああ・・別にかまいませんが・・・いいんですか?私、一応敵なんですけど」
頭をかきながら、意外な申し出にとまどう八戒。
「ちょっとこちらからで向くわけにも行かないので、私のお店の方にきていただければうれしいんですけど・・・」
「あ、そう言うことでしたら、かまいませんよ。お伺いいたしますね。折りを見つけてということでよろしければですが・・・」
「結構です。ホント、こちらからお願いしているのに、呼びつけるカタチになってしまって申し訳ないのですが、よろしくお願いいたします」
「そんなことでいいのでしたら、力になりますよ。おいしいお料理ができるといいですね。では、今日はこの辺で・・・」
「ええ、いらっしゃるのを楽しみにしていますわ」
「それでは・・・」
「お気をつけて・・・」
八戒は、またもときた道を帰っていった。
「さてと・・・今日のお料理を考えなくっちゃ!」
やおねもまた、自分のいる場所へと戻っていった。
その川縁にはきれいな夕日が川面に反射して、すばらしい景色を作り出していた。
まるで二人の道がすばらしいもので有るかのように・・・

FIN







1998 12/31 wrihted by ZIN
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