やおねのお店2:前編(やおね&八戒)




がたん!
その日の夕方、やおねがいつものように自分の喫茶店で仕事が一段落し、そろそろ閉店しよう
と思っていた頃、突然、店のドアが乱暴に開けられ、人が倒れ込むように入ってきた。
緑の上着を着て、レンズがひび割れてずれ落ちそうになった片眼鏡をかけ、息も絶え絶えなそ
の男は、それでも消え入りそうな笑顔で「スミマセン」とだけいうと、気を失った。
「八戒さん!!」
声をかけつつも、脈と呼吸を確認し、命に別状はないことを確認すると、やおねはほっと胸を
なで下ろした。
「それにしても、八戒さんがこんなになるまでの敵なんて、いったいだれなのかしら?それと
も、私の知らないところで、紅該児様が刺客を送っていらっしゃるとか?いいえ、そんなこと
はないわ、あの方はしばらく八戒さんたちの一行から手を引いているはずだし、なによりも、
私たちに対して、こそこそするようなお方ではないはずよ」
思わず、紅該児のことになると力が入ってしまう。
何とかして店のはじにおいてあるソファーまで八戒を運ぶと、血で汚れている上着を脱がせ、
手当を始める。
薬師の本領発揮と言うところか。
「あ、こんなところにも傷がある・・・」
手当を進めるうちにやおねは八戒の体に刻まれた傷を新しいものから、古いものまでたくさん
見つけた。
擦過傷や、裂傷は、今日付けられたものなのだろう、まだ傷口もふさがっていないし、深い傷
にはまだ包帯にも血がにじむ。
それでも一番やおねの目を引いたのはやはり腹部の大きな刺し傷であった。
「これは・・・」
そっと傷跡をなぞってみる。
非常に古い傷だ。
八戒は妖怪であるので、基本的に傷が残ることはないはずだ。
いろいろな体をみてきたやおねがすぐに思ったことは、この人は元人間だったのではないか?
ということであった。
人間の時に受けた傷であれば、妖怪になっても傷は残る。
ましてや、これほどの傷、普通の人間であれば即死であろう。
それほどの意志力、それほどの思い。
どんな理由があってこの傷が付いたのか、やおねは知らない。
それでも、この傷の思いを何となく感じ、やおねはそっと指でなでてみる。
すでに、完治しているはずなのに、八戒は気を失いながらも、うめき声をあげる。

to be ...







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