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八百鼡のお店3(八戒&八百鼡)


「あら、めずらしいですね。最近いらっしゃらないと思っていたのですが・・・」
カランとドアの呼び鈴が鳴り、八百鼡が振り向くとそこには柔らかい笑みを浮かべ
た八戒がいた。
「そう言えばひさしぶり・・・ですね。きちゃいました・・・」
すこし疲れ気味に見えるのは気のせいだろうか。
「まぁ・・どうぞ座って下さい。私たちはあいにくというか、おかげさまでと言う
か、最近は攻撃命令も無いようですので、こちらをゆっくりとやらせていただいて
います」
「そうなんですか・・・八百鼡さんとしてはこちらの方が向いているかもしれませ
んね。戦いには向いていないと思いますよ」
そういうと、すこし八百鼡はうつむいた。
「でも、紅孩児様のお役に立てないのは・・・」
「あぁ・・・そうでしたね。不用意な発言、申し訳有りません。でも、本当に貴女
には戦いのなかに居て欲しくないのですよ」
目の前に出されたカップに口を付けながら、八戒は八百鼡の瞳を見つめた。
「・・・そうかもしれませんね。私ではたいしてお役に立てませんし・・いや、む
しろ足を引っ張っているに近い気も」
「いえ、そういうわけではないんですよ」
くすくすと苦笑して、八戒はカップをソーサーの上に置いた。
「もともと貴女には戦いは向かないんじゃないかと思うんです。風邪薬から爆薬ま
で、『薬』と名の付くものには確かに長けているのかもしれませんが、どちらかと
いうと、風邪薬の方が長けていますよね?」
「・・・?!」
「いえ、爆薬を使ったときの貴女の戦闘方法をみて、どちらかというと、戦略や謀
略よりは、看護、回復系の方なのかと思ったもので」
あははと、いつもの笑みを浮かべながら、八戒はさらりと言ってのける。
「・・・八戒さんには結局なんでも見透かされてしまうんですね」
「別に深い意味はないんですけど、どうしても気になってしまうんですよ。心配性
なんでしょうか・・・」
「いえ、ありがとうございます。私も自分が紅孩児様の為に本当に何ができるのか、
不安になっていたものですから」
「紅茶・・・もらえますか?」
「えぇ・・・ちょっとまってくださいね」
ぱたぱたとかけてゆく八百鼡の後ろ姿をみて、八戒は小さなため息をついた。
「ふぅ。なかなか気持ちというのは伝わらないものですねぇ。だからこそ、伝えが
いがあることもまた事実ですが・・・」
かちゃり。
手元にカップとソーサーが綺麗に置かれる。
ポットは3分計をセットにした本格的なものだ。
「で、どうしたんですか?それこそ、八戒さんがこの店に来るなんてそんなにない
ことでしょうに。何かあったのですか?」
「えぇ、まぁ。何かあったと言えばそうですし、なにも無いと言えばそうなのかも
しれません」
「は?」
「え〜っと、焔のところへ明日行くんですよ。つまりは最終決戦なわけで、ちょっ
と八百鼡さんの顔を見ておきたいなぁと思ったわけです」
「あぁ・・例の神様・・・でしたっけ?いよいよですか・・・」
「えぇ、勝てるかどうかの見込みは正直難しいですけどね」
「いくらみなさんがお強いと言っても、全力の紅孩児様が一撃も与えられない相手
ですから・・・心配です」
「たぶん、悟空が鍵を握っていると思うんですよね。そこからどうにかして倒す方
法を考えないといけないのですが、どうも上手くまとまらなくて」
八戒は再びテーブルの上に視線を落とした。
「八戒さん・・・」
八百鼡は思わず八戒の手に自分の手を重ねた。
「八百鼡さん・・・」
八戒はその行動に驚き、八百鼡の顔をまじまじと見つめてしまう。
「私になにができるかわかりませんが、せめてここに居る時間はゆっくりとなさっ
て下さいね。静かに過ごしていただいてもかまいませんし、聞くだけでよろしかっ
たら、悩みを聞かせていただいてもかまいませんし・・あ、もちろん他の人には何
も言いません。できそうなことでしたら何でもおっしゃってくださいね」
その八百鼡の真摯な瞳に八戒は一瞬だけ下世話な願い事を言いそうになったことを
悔やんだ。
「大丈夫です。八百鼡さんが近くにいてくれるだけで嬉しいんです。いつでも来て
いい許可をいただけるだけで、充分ですよ」
「そう言っていただけると嬉しいです。ある意味、共通の敵・・・といえなくもな
いですからね」
そう言って、八百鼡は苦笑いをした。
紅孩児が負けたことで、敵討ちの意味も含んでいるのだろうか。
「少しゆっくりさせていただいてよろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ。それでは私は奥でランチの用意をしていますので、何かご用があ
りましたら呼んで下さいね」
「ありがとうございます」
「はい。では・・・」
八百鼡は席を立ち、厨房へと消えてゆく。
その姿を見送りながら、八戒はしばし空を見つめた。
「あんまり長居もできないんですけどね」
一人ごちる。
結局考えたところで結論は同じであるからだ。
「まぁ、三蔵達もたまには大目に見てくれるでしょう。僕がサボリなんて滅多にな
いことですし」
明日は決戦。
当たって砕けろしかないのは十分承知。
後はその気持ちをどう固めて、現場でどういう判断を下せるかだ。
そのための気持ちの余裕を作りに来た。
大丈夫、自分ならやれる。
八百鼡に会って、そう思えただけで十分だ。
あとは少しの休息をとろう。
戦いはすぐそこなのだから。

FIN

2001 03/04 written by ZIN
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