「しかし、調子悪そうだな」
朝食が終わり、片づけをしていると悟浄が声をかけてきた。
「そんなに調子悪そうに見えますか?」
「あぁ」
三蔵や悟空と比較すると比較的一緒にいる時間が長い悟浄がそういうのだ。
間違いないのだろう。
「きちんと寝ているつもりなんですけどねぇ」
八戒は小首をかしげる。
「なんにせよ、お前の調子が悪いと全員が苦労するからな。体調管理はきちんとしておけよ」
「悟浄、それなんか変ですよ?」
八戒がくすくすと笑う。
「おれらはみんな自分勝手なのよ」
ひらひらと手を振って悟浄が厨房を出て行く。
「やっぱり体の調子が悪いのでしょうか。一度町に行って、お医者様に見てもらうことにしましょうかねぇ」
八戒は厨房の窓から青く晴れた空をみながらぼんやりとつぶやいた。

晴天が続くのは良いが、しっかりと準備を整えた時に限って敵は現れないものである。

「うーん、暇だーっ」
確かに悟空がそろそろ暇すぎてねを上げるころである。
「確かに暇だな。タバコの消費が激しすぎる」
悟浄も悟空の相手をすることに飽きたのか、タバコを淡々とくゆらせるだけである。
当然のことながら、町に行ってナンパをするわけにもいかない。
一般の市民に迷惑がかからないようにわざわざ町を外れた場所に拠点を構えたのであるのだから。
「この調子だと今日はもう昼間は出てこないかもしれんな。むしろ闇にまぎれてという考え方のほうが正しいかも知れん」
三蔵もすでに取り置きの新聞もすべて読み終えたらしく、次の打つ手を考えていたようだ。
「って事は?」
悟空は何かをするのかと期待のまなざしで三蔵を見つめる。
「寝ておけ」
「はぁ?」
悟空は理解ができなかったようで、ぽかんと口を開ける。
「マヌケ顔を向けているなら吸殻をつっこむぞ?」
三蔵はそういって早々に灰皿に手を伸ばす。
「ちょっと待てよ!三蔵!!なんで寝るんだよー?まだ2時過ぎだぜ?」
食い下がる悟空。
ようやく暇から抜け出られると思ったのに、寝なさいとは理解ができない。
「あー、そういうことね。確かに正しい判断だとは思うが、悟空には無理なんぢゃねーの?」
合点を得た悟浄が軽いちゃちゃを入れる。
「んあ?どういうこと?」
「それはですね・・・」
八戒も三蔵の意図することをつかんだようである。
「ここしばらく昼間の襲撃は少ないですよね」
「うん」
「ということは、いつ襲撃がくることが多いでしょう?」
「夜じゃねーの?一昨日もそうだったし」
「そうすると、夜はあまり寝られませんよね?」
「うん」
「ということは、僕達はいつ寝るのでしょう?」
「ぉお!?」
「『ぉお!?』じゃねーっつの」
悟浄が思わず肩をすくめる。
「だって、誰もそう教えてくれないじゃんかよー」
「いや、さすがに気がつくだろうと思ってな」
「今、俺のこと馬鹿にしたか?」
「いや、純粋にものを知らないんだなと逆に感心した」
「・・・そーゆーのを、バカにしたったいうんだーっ!」
「ありゃ?バレたか」
わっはっはとそそくさと自分の部屋に向かう悟浄。
「うがーっ!!俺も寝るっ!!明るいけどっ!!!」
悟空も納得したようだ。
「三蔵も寝ますか?」
「ふん・・・。まぁ、自分の言った手前寝ないと示しがつかんしな。ついでに起きていて夜に使い物にならなかったら、それこそ自分に反吐が出る」
「三蔵らしいですね」
「お前はどうするんだ?そもそも寝不足のようだが」
「三蔵も気にしてくれていたんですね。ありがとうございます」
「足手まといになるようなら、とっくに置いていっている。さっさと体調を整えるんだな」
「えぇ、ですので、今日は皆さんが寝た後に町の医者に行ってこようと思います」
「ほぉ」
「一応今の姿は人間ですし、回復力はともかく体調不良の原因を調べないことにはどうしようもないので」
「そうだな。なるべく妖力を抑えて行動しろよ。どこで襲われるかわからないからな」
「わかりました。三蔵も確立は低いとはいえ、襲撃には備えておいてくださいね」
「当然だ」
さも当たり前のこととばかりに三蔵は鼻をならすと自分も部屋へ戻っていった。
彼のことだ、ログハウス全体に結界を張ってあるのだろう。
「しかし、何が原因なのでしょうか。体調管理はきちんとしているつもりなのですけどねぇ・・・」
八戒は首をかしげつつ外出の準備を整えに自分も部屋へと戻っていった。

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2005 01/23 written by ZIN
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