2000 REPLICA MOON ALL Right Reserved
ソラノハテ
第1章:城
第2部:普段の生活



カーテンの隙間から差し込んでくる光が朝であることを告げる。
まぶしいな。そう思った瞬間、目が覚めた。
普段と同じ日常、いつも通りの朝。
当然学校にも行かなければならない。
「寝ちゃったのか・・・」
ベッドから上半身のみを起こし、軽く頭を振る。
いつもは付けっぱなしのディスプレイがわざわざ電源まで落としてあることから、昨日の翁
との話が夢ではなかったことを物語っている。
その分、マシンの電源を冷やしているファンの音が無理矢理ふだんの生活を主張しているよ
うで少しいらだった。
「おはよう、翁」
ディスプレイの電源を入れ、翁に挨拶する。
「ぷはぁ、やっぱりディスプレイを自由に付けたり消したりできないと不便ですねぇ。まさ
か主電源まで落とされるとは思いませんでしたよ」
PC上の人物であるから当たり前ではあるが、翁はいつも通りの格好で画面に現れた。
「だって、自分で電源を落とすときはって、言ったじゃん」
「まぁ、それはそうなんですが」
あはは、と乾いた笑いと白々しい空気が流れる。
ごほんと咳払いをした後にいつもと変わらない調子で翁はシウに告げる。
「どーでもイイですけど、そろそろまずい時間では?」
はっとして時計を確認するシウ。
ご丁寧に翁はPCの時計部分を拡大して、シウに見せてくれた。
「うわぁ、まずいな、こりゃ。昨日の続きは帰ってきてからね!」
ばたばたと昨日帰ってきたままで寝てしまったしわくちゃの洋服を着替えると、シウは鞄を
つかんであわてて出ていった。
「相変わらずあわただしい人ですねぇ」
ほぅ・・・と、翁がため息をついた瞬間再び結構な勢いでシウの部屋のドアが開いた。
「ミニPC忘れた!」
それだけ大きな声で言うと、机の上に投げ出されていた身にPCをつかんだ。
「いってきます!」
シウにしては多少ドアを乱暴に閉めて、再び出かけていった。
翁は自分の時計を見て、一言。
「こりゃ、遅刻ですね」
とつぶやいて、肩をすくめた。

「シーウ!はやくはやく!」
学校の窓から同級生で近所に住んでいるトウが階段を駆け上がるシウに向かって
声をかけていたが、首を窓から引っ込めたのを見て、自分が完全に遅刻したことを悟ってし
まった。
「・・・おはようございます」
教室にはいると全員の視線が痛い。
「珍しいわね、シウ。あなたが遅刻なんて。まぁ、いいわ、大した遅刻でもないし、早く席
に着きなさい」
シウ達の担任である女の先生は特にシウの遅刻をとがめるでもなく、いつも通りにHRを始
めた。
「よかったわね。怒られなくて」
トウが隣から話しかける。
「うん、もっと言われるかと思った。あんまり遅刻って言う概念が無いからね」
「ところで、今日はどうしたの?起こそうと思って、翁に連絡取ったんだけど、反応無かっ
たよ?PCの電源でも落ちていたの?」
「ん〜、まぁ、そんなとこかな?ちょっといろいろあってね」
「翁と喧嘩でもしたの?」
「そういうわけでもないんだけど・・」
そこで、シウは言葉を止めた。
ふと顔を上げると担任がすぐ近くに来ていたのであった。
「遅刻をした上におしゃべりとはいい根性しているわね。どうしたのかしら?シウくん?」
明らかにこめかみがぴくぴくした表情にシウとトウの顔も引きつる。
「あはは・・・ごめんなさい」
「あはは。じゃありません。すこし外に出て反省してきなさい」
乾いた笑いではごまかしきれなかったようだ。
教室に失笑が広がる。
「はいはい、よけいなおしゃべりはしない!授業を進めるわよ!サーバフォルダの今日の部
分を開けて、まず120ページからを読んでください・・・」
ガラガラ・・・
教室のドアを開け、外に出る二人。
「ま、いいか・・・ゆっくり考えられるし」
「何があったの?」
真剣に考え事をしているシウの表情に不安そうな面もちで顔をのぞき込むトウ。
「何でもないよ。ちょっと考え事をね」
シウは笑ってみせるが、その表情は硬かった。
「前から言っていた、外の世界の話?」
少しだけ考えるような仕草を見せるとトウはシウに思いついたことを聞く。
「まぁ、そんなとこ」
「あんまし深くは聞かないけど、手伝えることあったら言ってね。いつでも私はシウの味方
だよ」
「さんきゅ」
そう言って二人は外を見上げた。
ドーム型に増築され尽くした天井の先にはかろうじて小さな青い空が見える。
あの空の果てを見るためにはどうしても外の世界を知る必要がある。
「外の世界・・・ソラノハテか・・・」

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2000 05/11 written by ZIN
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