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ソラノハテ
第1章:城
第3部:追跡者



授業も終わり、いつも通りの放課後。
シウとトウは無事に1時間だけで許され、授業に戻ることができた。
勉強が嫌いではないシウはむしろ成績のいい方で、これまで立たされると言うことは無かっ
たのだが、遅刻の上におしゃべりまですれば立たされると言ういい教訓になったと自分では
考えていた。
教訓になったと考えてしまうところに教師はあまりよく思っていないのだが、それをシウは
知る由もない。
放課後まで一通りの授業を適当に聞き終えたシウは最近通い詰めている図書館にまっすぐに
向かった。
普段通りに何人かの友人がシウに遊びに誘ったり、放課後の予定を聞いたりしているが、シ
ウはほほえんでかぶりを振るばかり。
ここ数日の彼の行動にそろそろなれてきたのか、友人達も特に強くは誘わなくなっているよ
うだ。
そんなシウをトウは寂しげな視線で見つめた。
「なんか、遠くへ行っちゃうみたい・・・」
当番の仕事を机の上に広げたまま、トウは今日何度目かの大きなため息をついた。

シウは図書館の入館手続きを済ますと、いつものいすに座り、荷物を置くとまだ読んでいな
い一通りの歴史の本を検索し始めた。
多くの書籍は電子化され、そのほとんどがPCから直接読めるようになっているが、図書館
で実際の紙にふれて字を読むことをシウは好んだ。
絶版され、物理的に読むことのできない本はPC上で読むこともあるが、そんな物は自宅に
戻ってからでも十分だ。
大きな机をいつも通りに占領すると、シウはその山を片っ端から読み始めた。
ここ最近いつもの2時間、シウはこうして放課後を過ごすようになっていた。
”城の発展”、”城の歴史”、”管理組織総禄”、etc。
図書館はPCの普及の関係上、ほとんど人間がいないので、見とがめられることは無いが、
調べ方を見れば、思想犯と間違われかねない選択基準である。
「そうか・・・やっぱり・・・」
今までは自分なりに勉強してきた歴史の延長でしか調査をしていなかったシウであるが、翁
に指摘されたとおり、外に出るという視点で資料を調べるとその行動がいかに難しいかを思
い知らされる。
どのようにこの城ができあがったのかではなく、まず「城」ありきなのだ。
そしてその「城」がいかにすばらしいかという論点に終始してしまう。
確かに問題はないのだ。
この中で暮らす分には。
それはわかっているのだが・・・
ふと時計を見ると閉館まで後10分と言うところまで時間がたっていた。
そろそろ閉館のアナウンスと、曲が流れ出すだろう。
続きは明日にでもしようと片づけ始めたシウの視界に妙な違和感を感じる物が映った。
それは二つ先に座っているサラリーマン風の男であった。
会社で依頼された調べ物でもしているのだろうと最初思ったが、どうも動きが不審であると
感じていた。
視線を感じる。
それは最初何となくであったが、だんだん確実な物として、シウは感じ始めた。
『すでに好ましくない状況にある?』
シウの脳裏に昨日の翁とのやりとりが思い出される。
『監視されている?』
状況から考えるに、そんな予測が頭に浮かんだが、特に接触してきていない以上、シウは勘
だけで物事を考えることをやめた。
『翁に相談してみよう』
そう考えることで、自分自身を納得させ、本を片づけると、シウは自宅への帰路に就いた。
自宅までは数分。それほどの危険はないだろう。

そして、シウは自分の勘が正しかったことを自宅に戻ってから知ることになる。

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