2000 REPLICA MOON ALL Right Reserved
ソラノハテ
第1章:城
第4部:NEWマシン



「ただいま〜」
いつもどおり、外で夕飯を購入し、自宅に入ったところで、シウは違和感を感じた。
マシンの電源が入っていない。
「翁?」
呼んでみてもいつもめんどくさそうに帰ってくる返事がない。
「え・・・なんだろう?」
マシンの電源を入れてみる。
ぶぅん・・・
電源は普通に入るようだ。
シウはいつも自宅マシンの電源を切ることはない。
今日の朝もディスプレイの電源を入れていなくて翁に怒られたぐらいなのだから。
なんの事はない、翁がマシンの中にいる以上、基本的に電源を落とすことはないのだ。
ある意味家族と同等かそれ以上の存在である翁は常にデスクトップ上にいる。
それはシウにとってごく普通の環境だったのだ。
電源が入っていないと言うことはトラブルか?それとも翁が自分で落とした?
それ以外に考えられることは・・・
一瞬いやな考えが頭をよぎって、シウは頭をぶんぶんと振った。
「んなわけ無いか・・・」
マシンが立ち上がる時間も惜しいので、ミニノートを立ち上げる。
音はなかったのにメールの着信がある。
メールを開くと翁からであった。
図書館でメールの着信音を消していたのをすっかり忘れていたようだ。
早速開くと、早く帰ってくるようにとだけ記されている。
翁がメールを送るなんて珍しい。
これは、ますます怪しいと思い、デスクトップを見つめる。
無事にスタート画面が終了し、いつものログオン画面になる。
ちょっとだけ気になったことがあったので、シウはログオンをせずに電源だけ使用するモー
ドで立ち上げた。
これがのちのち成功の鍵となる。
「翁?」
「やぁ、シウ。やっぱり君は頭のいい子だよ。ネットワークに接続しないで立ち上げたね。
大当たりだ」
「何かあったの?」
「ん〜、何かというか、予想通りというか・・・」
そこで翁は苦笑した。
こうして話しているのも時間が惜しいような雰囲気である。
「ひょっとして急いでいる?何があったのか、手短に聞いた方がいいのかな?」
「勘のいい子は助かりますね」
そう言って、翁は目を細める。
そういう顔をすると『翁』の名前にふさわしい年を経た人のように感じる。
「かいつまんで話すと、当局の手が早速伸びました。私はとりあえず緊急避難場所に退避し
ましたけど、一通りマシンを検索して帰っていったようですね。一般のコンテンツを検索し
た分以外はブックマークも消して置いたので、特に問題はないと思いますが、帰り際に本人
の癖なのか、マシンの電源を落とされたのは痛かったですね。おかげでシウが違和感に気が
ついたわけですが」
そこで翁はまた目を細めた。
成長した自分の息子を見るような目をするなと、本当の親は知らないけれど、シウはそう感
じた。
「それで、どうすればいい?」
一番聞きたいことをまっすぐに聞く。
「自分で考えなさい。おそらくすでに当局は個人調査に乗り出しているはずです。また、あ
なたにこれだけの知識を植え付けた存在についても調査を開始するでしょう。そうすれば、
私の存在もデータ上には存在しなくても、状況証拠等から、遅かれ早かれ判明することは目
に見えています」
「翁がいることを知っている人間も多いからね」
「そうです。選択肢は二つに一つ。このまま城の中にとどまり、当局の質問にはすっとぼけ
続ける。これは今までと変わらない生活が約束されます。私のことは自分で作った人工知能
ぐらいに言っておけばいいでしょう。もう一つは、この城を出る事です。これは昨日の夜に
シウは考えさせてくれと言った内容でもあります。ちょっと急になってしまいましたが、考
える前に選択する必要性が先に来ちゃったみたいですね」
翁は画面の中で肩をすくめてみせる。
「そんなことは簡単だ。僕の考えはもう決まっている」
「はい」
「外に行くよ」
「そう言ってくれると信じていました。それではあなたにプレゼントがあります。天井裏の
右隅を開けてください」
「?」
「さぁ!」
言われるままに天井で唯一開けることのできる右隅の通風口を開ける。
普段は滅多に使わない配線メンテナンス、及び通風用のふたである。
「!?これは・・・?」
そこにはずいぶん古い感じのするノートパソコンがあった。
しかしながら手に取ってみると異様に軽い。
大きさはA5サイズ、重さは500グラムも無いかもしれない。
シウが記憶する限り、現行機種では存在しないモデルだ。
「これは?」
「マシン名は”Arkθ”スペックはCPUがAlphaG7、Memoryオンチップ1TB、空気発電電池でバ
ッテリー切れは無いマシンです」
「そんな・・・こんなマシンが実在するなんて・・・」
マシンに驚愕するシウを気にせず、翁は指示を出す。
「さ、はやくローカルケーブルでこのマシンとそのマシンをつなげてください。今までのデ
ータを転送しておきます。あと私自身もね」
シウは言われるままにケーブルを接続し、データの転送を始める。
新しいマシン(ほこりかぶってはいるが)の電源を入れると、一瞬でユーザインターフェー
ス画面に到達する。
物理稼働デバイスが無い分、非常に高速な端末のようだ。
ほんの数秒でデータの転送が完了し、NEWマシンにいつもの見慣れた翁の顔が映る。
「ふぅ・・・久しぶりですね。このマシンに自分を存在させるのも・・・」
そう言って、翁は嬉しそうにマシンの画面でのびをする。
インタフェースはキーボードの他にマイクやスピーカもついているようだ。
「昔?こんなマシンが昔にすでに存在していた?」
「そう言うものですよ、世界なんて」
翁は苦笑する。
「ヤダなぁ。その言い方」
すねてみせるが所詮はシウもわかっていることなのだ。
そう言うものなのだ、世界は。
「・・・で?」
「とりあえず学校に向かってください。あと、荷物はなるべく小さい方がいいですね。2〜
3日分の着替えだけでイイと思いますよ」
「わかった。15分で戻ってくるよ」
「はい」
本当にシウは自分の荷造りを15分で済ませ、戻ってきた。
「本当にいいんですね」
「うん、自分のやりたいことをやってみる。知りたいことも有るし・・・」
「わかりました。細かいことは今は聞かないことにしましょう。じゃあ、行きましょうか?」
「うん!」
シウはArkθを小脇に抱えると、自宅を出た。
数10メートルを言ったところで、突然翁から声がかかった。
「隠れて!シウ!」
その言葉にシウはすぐに物陰に身を隠す。
曲がろうとした角から黒いスーツを着た数人がシウのうちへ目指して走って行くところであ
った。
「あれは?」
「どうやら、私の思っていたよりも、はやく当局の調査が入ったようですね。タイミング的
にぎりぎりだったようです」
「ふぅ・・・あぶないなぁ。とりあえず、行きますか」
「もう大丈夫なようです。学校からは案内しますので、とりあえず向かってください」
「了解!」

冒険が始まる・・・

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