2000 REPLICA MOON ALL Right Reserved
ソラノハテ
第2章:龍街
第3部:合意

PREV
TITLE
NEXT


「ふぅ・・・」
ようやくラオの手から解放された紫雨は一息つき、カップのコーヒーを一
口飲んだ。
ラオはArkθをいじくり回している。
よっぽど興味が尽きないようだ。
そんなラオを後目に、テーブルから立ち上がり、部屋の中をぐるっと見回
してみると、ほんとうにいろいろな物がある。
2LDKと言ったところだろうか・・・
一人暮らしとしては間取り的に大きいのかもしれないが、ざっと見てもマ
シンと書類の山で、すでに一つの部屋は埋もれている。
おそらくは寝室だったのであろう・・・かろうじてその山の中からベッド
の片鱗が見える。
今いるこの部屋はリビングと言ったところか?
台所・・・と言うよりもすでにマシン室とかしているその部屋にはコード
がはい回っており、一つだけ、ベッドのような施設が目を引いた。
少しだけ中を覗いてみても、なんのために使うのか見当もつかず、紫雨は
天井を見上げた。
すると、そこには一枚の大きな地図があった。
「どうしたんだい?紫雨」
上を見上げてぼんやりしていると思われたのか、ラオが声をかけてきた。
「ん?ああ、それね。地図だよ・・・この街・・・いや、世界のね」
ラオは得意げに紫雨に説明してみせた。
「ちず?」
「・・・ひょっとして、キミ、地図を知らない?」
「?」
首を傾げる紫雨にラオは肩を落とした。

・・・

「しっかし、城の中って言うのは、そんなもんなのかねぇ・・」
地図という物がどういうものか一通り説明したラオは、またテーブルに着
いた。
そしてため息をつきつつ、紫雨の顔を見る。
「だって、仕方ないじゃないか、そもそもそんなに生活圏は広くないし、
ましてや、ナビゲーションシステムの張り巡らされた城の中で迷うってい
う方が難しいんだ。生活区域外には出ちゃ行けないことになっているから、
そこに迷い込むということもほとんどないし、ましてや、入り込もう物な
ら、すぐに強制排出されちゃうよ」
「僕にはわっかんないなぁ?自由に動けない?自由に歩けない?気の向く
ままに移動のできない、行き止まりのある空間に生活していて何が楽しい?
理解不能だね」
『はっ』と、肩をすくめて紫雨に連続した疑問を投げる。
当然ながら、紫雨はいつも通りの言葉を返すのみだ。
「それしか知らなかったんだから、仕方ないんだよ」
「でも、外に出てみようという気持ちを抑えられなかったんだ」
ラオの視線がまっすぐに紫雨を見つめる。
「うん・・・でも、僕は環境が特殊だったんだと思う。翁がいたし、それ
を疑問にも思わなかった。両親がいるように僕には翁がいることが当たり
前だったんだ」
「へぇ・・・」
視線を紫雨からはずし、今度は翁を見ると、いっちょ前に照れているよう
だ。
正確には翁の年齢はラオや、ましてや紫雨なんぞとは比べ物にならないほ
どなのであるが、外見がそれほど年を取っていないので、つい忘れてしま
う。
「だから外に出てみようと思った。外の世界で何があるのか、あの空の向
こうには何があるのかを自分の目で確かめたかったんだ」
「あの空の向こう?」
「・・・うん、城はすべて360°外壁に覆われているから、上の方へド
ーム型になっているんだ。昼は証明で照らされているから、そんなに感じ
ないんだけど、夜になると、真っ暗な壁が天井近くまで行く空は凄く不気
味なんだ。でも、一番てっぺん・・・もちろん普通に入れるところだよ。
そこで昼間に見る小さいけど青い空、夜に見る少しだけど輝く星達を見る
と、どうしてもそれをめいいっぱい見たくなる。そう、あのソラノハテに
は何があるのかをね」
そう説明する紫雨の目は輝いていた。
ラオが思わずちゃかすのを忘れるほどに。
「そうか・・・だから、城の近くで空を見上げていたのか。ただぼんやり
していたわけじゃないんだな」
「いくら僕でも、そんなにいつもぼんやりしているわけじゃない」
「多少は自覚があるんだ」
くすっと笑ってやると、すぐすねる。
「ぶぅ・・・」
「ごめんごめん、まぁ、そうすると、まずこの龍街がどうなっているのか
を知ってもらった方がいいかな?それから、自分で動いていくといい」
「?」
「僕が案内してもいいけど、高いよ」
にやっと笑うラオの表情の裏には計算高さがうかがえた。
「遠慮しておきます。でも、どうやって知るのか・・・」
「じゃあ、こうしよう、ウチで君を雇うというのはどうだい?」
「え?僕を雇うの?」
「うん、そろそろ一人じゃどうしようもないと思っていたんだ。コンピュ
ータが得意な事務処理をしてくれる人がほしいと思っていたしね。ついで
にここの片づけもお願いしたい。勝手を知っている人じゃないと、困るん
だ。散らかっているようで、大切な資料も結構混じっているからね」
「ふうん・・」
豪快に散らかった部屋の中を改めて見回す。
とても大切な資料が混じっているとは思えない。
ましてや、有用な情報の比率が多いなど、とても考えられないように紫雨
は思った。
これはやりがいがありそうだ。
「どぉ?3食宿付きでラオちゃんのガイドも受けられるこの案に乗らない
手はないよぉ」
「う〜ん・・・」
少しだけ腕組みをして考えた後、翁をちらりと見る。
気持ちうなずいたように見えたのは紫雨の錯覚だっただろうか。
「よし、その話、乗ろう!」
「そうこなくっちゃ!」
「それじゃ、改めてよろしく、ラオ」
「こちらこそ。あと、翁もよろしくね」
「ええ、紫雨をよろしくです」
ラオと紫雨は握手を交わし、翁と供に笑った。

the Next story as...

PREV
TITLE
NEXT


2000 10/12 written by ZIN
1994-2000 MEGA-Company Co.Ltd ALL Right Reserved
Produced and Base story from SAKIYA AZUMI
2000 REPLICA MOON ALL Right Reserved

Main Site  ■Circle Site  ■GAME News Site  ■Cyber Drink Site
The Main System Produced By MEGA-Company. Generated from HAZER Operating System.