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ソラノハテ
第2章:龍街
第2部:会合

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龍街西区。
貧富が混合している龍街であるが、それでも富豪地域と貧困地域とに区別
されるとすれば、ここは貧困地域であろう。
早足で振り返ることのほとんどないラオに必死でついていきながら、シウ
は進んでいく先の雰囲気が城に似ている事を感じていた。
雑多な建物。無造作に増築されたアパート。入り組んだ路地の中を蕩々と
流れる地下水脈。
西洋と東洋が入り交じるとこんな感じになるのだろうか?
異文化の融合と言うのは意外とこういう形で実現してしまえば、簡単なの
かもしれない。
学校で習った、文化の違いというのをなんとなくシウは思い出していた。
「ついたよ」
その一言に、ようやくラオの自宅についたことを知らされる。
「遠いって・・・」
息切れ気味にシウがぼやくとラオはあきれた。
「コレだから、城出身のぼんぼんは」
”はぁ”と肩をすくめてシウを一瞥してからとりあえずばたばたと床に散
らかっている資料を片づけ始める。
「紙・・・を使っているの?」
シウは不思議そうにその光景を見つめる。
「ん?紙を知らないの?・・・いや、有ることは知っているって言うべき
なのかな?」
「うん。でも、個人で利用している人を見るのは初めてだな。図書館で昔
の本を見るときぐらいしか見たこと無いよ」
「へぇ・・・そう言う文化になっているんだ。ホント、城っていうのは興
味がつきないね。いったい何から聞こうかなぁ」
ラオはシウの反応一つ一つに興味を示している。
「あ、そこに座ってて。お茶しか無いけど、いいよね?」
「あ、お構いなく」
その反応にラオはまた吹き出す。
「何ですか?人の顔を見て吹き出すなんて」
憮然とした表情でラオに意見する。
「ええ?だって、あんまりイメージ通りだからさ」
「イメージ通りって?」
「言っても怒らない?」
「たぶん」
「ぼんぼんって、ことだよ」
「・・・!」
顔を紅くするが、自分で怒らないと言った以上、怒るわけにもいかず、シ
ウは黙り込んだ。
「その僕って言う言い方も、ますます雰囲気を幼くしているよね。ま、人
のキャラクターはそんなに気軽に変わる訳じゃないから、気にしなくても
イイとおもうけどさ・・・はいよ!」
トンッと、軽くテーブルの上にマグカップを置き、ラオはシウと対面にな
るいすに座る。
「ありがと」
「で、そのマシン、開けてくれると嬉しいんだけど?」
「・・・翁、いい?」
「別にかまいませんよ」
「じゃあ・・・」
ラオのものすごい勢いの視線に不安を感じながらも、シウはArkθを開ける。
「始めまして、翁と言います。いや、先ほど面識はあるから正確には始め
ましてではないかもしれませんね。まぁ、どうでもいいことかもしれませ
んね。ラオさんでしたっけ?よろしく」
「へぇ・・・本物だぁ・・・」
ラオはしばし感動に浸っているようだ。
「あなたこそ、珍しいですよね」
そこで一瞬だけ間をおき、翁の目に冷たい光が宿る。
「サイバノイドはまだ実験段階だったはずですが、実用化されたのですか?」
その標榜の変化に多少とまどったが、ラオはちゃかして答えた。
「何事にもプロトタイプは必要って事だよ・・・ね、シウ?」
「はぁ・・・」
話を振ったつもりであったが、当のシウはきょとんとした顔をしている。
話の内容が全くつかめていないようだ。
「ねぇ、この子には何も話していないの?」
すっとぼけたシウの反応にあきれたラオは再び翁に話を戻す。
「ええ、とりあえずは外に出ることが先決だったものですから」
一瞬だけ見せた表情の変化はすでに消え、あははと照れて頭を掻く翁の姿
に先ほどの切り裂くような冷たさはない。
「へぇ・・・ってことは、そろそろあの計画が進行し始めたって事か」
「いろいろ知っているようですね、今度ゆっくり教えていただけますか?」
「僕は情報屋だからね。だてにこの年でやってないよ。知っていて、当然
ってところかな。龍街の現状を教えるのはいいけど、高いよ」
人差し指をたてて、ひょいひょいと振りながら、翁に負けていない。
結構な性格なのかもしれない。
「ん?ところで、シウ?何をきょろきょろしてんのさ」
マグカップを抱えたまま、シウはラオの部屋の中をきょろきょろと見てい
る。
「女の子の部屋をじろじろ見るモンじゃないよ」
「女の子の部屋と言うよりは、一人暮らしの男の・・・モガッ」
「ほほう・・・そう言うことを言う口はこのくちか?ホレホレ」
おもむろにシウの唇の端を引っ張り、続けて両手でうにうにとほっぺをつ
かむ。
「あひゃひゃ・・ごへんなさひ・・とても機能的で・・よいへやでふ」
「わかればよろしい」
そこまで言わせて、ようやくつかんでいた手を離す。
「ぷはぁ!・・・ひどいなぁ・・女の子だなんて、自分で言うなよ」
「これでもうら若き15歳の乙女なんだからね、よけいなことを言うと、
蹴るよ」
「乙女は蹴りはしないと思うんだけど・・・」
「なんか言った?」
「いえ、別に・・・」
「いいコンビなのかもしれませんね」
「勘弁してよ・・・」
くすくすと笑う翁にシウはものすごい勢いで脱力した。

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