目が覚めてみる。
結局いつもと同じ朝。
いつもと同じ太陽。
射し込む光はまぶしいようで、優しくて。
蒲団の中からでも柔らかい光が射し込む。
「ん・・・」
少しだけまどろんでみようと思うのはあれだけ彼らに迷惑をかけたからだろうか。
悟空もご飯を作らなかったことに対して怒っているかもしれない。
「いつもは起こすがわなのに・・・ね」
そしてもう一度蒲団に潜ってみるが、今一落ち着かない。
黙っていても夜はやってくるし、起きたくなくても朝はやってくる。
そして旅は、自分の意志とは無関係に進めなくてはならない。
自分の意志で進めなければならない。
そう誓った。そう決めたのだから。
意を決したように八戒は蒲団を上げ、着のみのままだった衣服を整えた。
髪の毛を整え、眼鏡をかけ直す。
「この片眼鏡も板についてきましたねぇ・・・」
自分で鏡を見てそんなことを思う。
中指で少しずれた鼻のあたりをなおし、扉を開ける。
そこには悟浄と三蔵がいた。
「あれ?どうしたんですか?」
きょとんとする八戒の顔に、二人の表情に安堵感と疲れが見えた。
「どうしたんですか?じゃねぇだろうがよ〜、昨日あれだけ深刻な顔のまま出ていきやがって!」
といいつつ、悟浄が八戒の首を軽く絞める。
「ご・・・悟浄、いたいですってば!」
八戒が困った顔をするが、そんなことはお構いなしだ。
「心配させやがってぇ・・・」
悟空にいつもしているように、脳天をぐりぐりとする。
「つまらん・・・」
三蔵はそれだけ言うと、くるりと背を向けた。
「飯だそうだ・・・行くぞ」
それだけ行って階下へと降りてゆく。
「三蔵も、心配で眠れなかったんだぜ。あの三蔵様がよ」
にやにやとしながら悟浄が八戒に囁くが、その行動を見て取ったのか、三蔵が銃を構える。
「おい、色情ガッパ、飯前に死にたいのか?」
「い〜え、とんでもございません。おなかぺこぺこでございます」
「ふん!」
多少普段よりも大きめな足音をたて、三蔵は階下へと降りる足をまた進めた。
「あちゃあ、心配かけちゃいましたね」
「そりゃそうだ。でも、まぁ、復活したようでなによりだわな」
「えぇ、まぁ・・・」
「ん?なに?まだ悩んでんの?」
「まぁ、こればっかりは、悩みと言うよりも、つきあって行かなきゃいけない病気みたいなモノなんでしょうね」
「おいおい、あんまし頻繁に発症されると、こっちがまいっちまうぜ」
ひょいと肩をすくめながらも、悟浄はそんなにしんどそうでもない。
「ご迷惑をおかけします」
「今に始まった事じゃねぇしな。いいんでない?人は悩んで成長するモノよ」
「妖怪ですけどね」
「そりゃいいっこ無しって事で」
「そうですね」
二人は肩を組んで軽く笑った。
「早くしろ!飯が冷める!」
「おおっと、下で癇癪持ちが爆発寸前だ。早く行こうぜ」
「えぇ・・・」
そう、早く進むしかないのだ。
倒れそうになっても、倒れるのは前のめりに倒れたい。
進め進め、先へ先へ。
そして見えなくても進め。
前へ・・・前へ・・・
そう、前へ前へ。
FIN
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